「期待していた大河ドラマ『青天を衝け』が、全然面白くなくてがっかりしている」

 NHKのエース・ディレクター、黒崎博さんがチーフで演出する大河ドラマの『青天を衝け』が、まだ2回しか見ていないのに、あまり面白くないのでがっかりしている。
 残念である。
 脚本がつまらない。説教臭い。
 大成功した経済界の大物って、大河ドラマの主人公として相応しいか。
 「ノー」だ。
 要するに金儲けの親分ということだろう。精神性微弱。
 妻妾同居させて、エッチをやりまくった品のない男ってことも気持ちが悪い。いささか頭の回し過ぎではあるが、私はタイトルの『青天を衝け』の『衝け』の字も、ひっかかる。
 男性自身で女性(にょしょう)の局部を『衝け』と言っているように感じるのだ。ハハハ、ひね過ぎ(笑)。
 それと、渋沢栄一がお札になるタイミングに合わせて、大河ドラマの主人公に起用されたことに、私は勘繰りたくなくても勘繰ってしまう。局の予算を牛耳っているお上の意向かと思いたくなる。
 第1回にいきなり出てきた徳川家康(北大路欣也)が、マンガみたいな背景を前に、江戸時代の講釈を垂れるシーンについて、脚本家(大森美香)が『NHKウイークリー ステラ』誌上ではっきり述べている。
 「渋沢栄一が生きた幕末から昭和までの物語を、私たちと同じように俯瞰してくれる人がほしいと思ったんです。とくに江戸幕府が閉じる時代だからこそ、江戸幕府がどうやってできたかというのも大切になってくる。だから幕府を開いた家康さんがいいなと。最初にアイデアを伝えたとき、スタッフさんはザワザワしましたが(笑)、書いてみるとピッタリで。~後略」
 やっぱり、脚本家は視聴者に説教垂れるのが意図だったのだ!
 ふざけるな。大河ドラマで江戸時代からの学習をさせようなんて、あなたはそんなに偉いのか? 大きなお世話だ。
 まず、視聴率20%越えを取った第1回について。
 豪農の父ちゃん、渋沢市郎右衛門(小林薫)は勤勉な藍玉づくりの名手である。
 豪農の当主だからして、使用人も多いし、近隣の小作人たちにも命令口調である。日々、畑に出て小作人たちに指図している合間に、長男の栄一たちにも言葉で商売を教える。
 母親の渋沢ゑい(和久井映見)は、理想的な伴侶、お人好しで情け深い女性だと解説書に書いてある。
 このゑいが、幼い栄一のワンパクぶりを諭すシーンについて、私は夕刊紙から取材されたので答えた。
 「それが本当に正しいか、正しくないか、胸に手を当てて考えればわかる」という場面があった。農家の母親が、猫の手も借りたい忙しい仕事の合間に、こんなことを言うか。
 子役(小林優仁)はお喋りだった渋沢栄一役に向いている唇の薄い子供を選んであって、中々達者で可愛いが、成人した栄一(吉沢亮)は気に入らない。
 よほどスタッフの誰かが吉沢フアンなのだろうが、のっぺり顔の吉沢を私はあまり好きではない。だいたい、彼は農家の子倅に見えない。
 土下座して将軍様に頭を擦り付けて挨拶する場面でも、従兄の渋沢喜作(高良健吾)と2人並んで顔がドアップ。2人ともノッペリしすぎていて、農民に見えない。
 一方、幕府側の人物たちは面白い。癖のある水戸藩主の徳川斉昭(竹中直人)、最後の将軍・徳川慶喜(草彅剛)、子供時代の七郎麻呂(笠松基生)など、キンキラキンの豪華衣装をつけて、「これじゃあ、幕府も左前になるわナ」、ついでにNHKの制作予算も「大変だわナ」と同情したくなる出来栄えだ。
 ジャニーズを追い出された草彅剛くん、大河ドラマに出られて良かったね。
 第1回で私がもっとも苦手だった場面は、「お蚕様」が桑の葉を食っているCG画面。とにかく私は虫嫌いで、その中でも、白いにょろにょろした蚕は、想像しただけでも総毛立つ気持ちの悪さである。生理的に合わない。
 大昔、疎開先の田舎で、蚕のための桑の葉を摘み取りさせられたことがあり、今でも総毛立つトラウマになっている。蚕は水分を与えたらだめで、濡れた桑の葉は摘み取ってはならないと教えられた記憶がある。
 その蚕が蚕棚でシャーシャーと桑の葉を食っているシーンを見てしまったのだ。
 ゾーッとして身震いした。無神経な場面だった。
 第2回の「栄一、踊る」では、御用金と人手を用意しろと代官に要求されて、「人手は減らしてほしい」と懇願する市郎右衛門。聞き入れられず、結局お代官様の要求通り。ここでもすごく説教臭いのだ。つまり、わずか9歳の栄一が身分制度の理不尽さに気付くことになっているが、江戸時代に、身分制度という概念は農民にはなかったはずである。生まれながらの身分の違いに、子供が疑問を抱くなど、それは現代人から見た解釈である。
 まあ、文句を言ったらキリがない。
 肝心なのは(私がつまらないと思う大きな理由の1つ)、渋沢栄一を主人公にしたこのドラマの、肝心要の、その主人公が視聴者の共感を呼ばないのではないかという危惧である。
 たったの2回目で文句は言いたくないが、つまらなかった『いだてん~東京オリムピック噺』の2の前になるのではないか。あの作品も相当長く我慢してみたが、ついに途中で挫折した。いろいろ審査員をやっているので、視聴を止めることは出来なかったので、ストレスは酷かった。
 願わくば、『青天を衝け』が青天を衝いてくれることを願う。
 この調子で1年間は、また、拷問である。
 少なくとも、蚕棚のCGだけは出さないでおくれ。
 頑張ってね。(2021.2.28)
                                    (無断転載禁止)