「BビッグBボスの新庄剛志さんと、ホテルでニアミスした話」

   1990年代の終わりごろ、吉田義男さんが3回目の阪神タイガース監督だった時、私は彼とニアミスをした。当時、新庄剛志くんも阪神タイガースの選手だった。
  私はテレビ界のコンクールである民間放送連盟賞、中部・北陸地区の審査員を依頼されていて、名前は忘れたが、金沢の立派なホテルに泊まることになった。
  ホテルに着いた日に、チェックインして部屋に上がろうとして、エレベーターの前に立った時だ。エレベーターがその階について、ドアが開いた。
  2人の男性が乗っていた。
  「えっ?」「この方は阪神タイガースの監督さん?」
  お顔は知っていたので、吉田義男さんだとわかった。
  野球人にしては小柄な方であった。
  私が乗ろうとして、ちょっとビックリひるんでいると、吉田さんと連れの男性がニコニコしてくれた。彼らはいつもそんな目に遭っているのだろう。
  身を縮めて彼らの前に立ち、私は自分の部屋のある階で降りたが、2人の男性はそのまま乗って上がっていった。さあすが。プロ野球の監督さんは高価な上層階に泊っているのだなと思った。
  それっきり私は彼らのことを忘れてしまった。
  翌朝の早い時間である。
  早起きの私でもまだベッドの中にいる時に、何となくホテルの外の方が騒がしいのだ。
  「何だろう」と思い、私は開かない窓に近づいて地上を見下ろした。
  下の道路の反対側の端に若い女性が数人、横並びになって上を見上げている。
  嬌声も聞こえる。
  ぴょんぴょん跳ねて手を振っている女の子もいる。
  彼女たちが誰を見ているのか。咄嗟に私は思いつかなかった。
  私が泊った部屋の上の階に、阪神タイガースのスター選手が泊っていたのである。後からそれを聞いた。まぎれもなく、大人気選手の新庄剛志くんであった。
  こんな早朝から、ホテルにやってくる追っかけがいるとはと、私は驚いた。
  フアンとは有難いものである。
  「うぁ、見たかったわ、新庄くん」と、私はミーハー度を発揮したが、残念ながら会えなかった。しかし、間違いなく私が宿泊した部屋の上の階に彼は泊っていたのに違いなかった。
  それ以来、格別ファンでもなかった新庄くんのことが気になるようになり、例の「敬遠のボール球」をヒットにしてしまった有名な場面も、私は中継で見た記憶がある。
  今回、久しぶりにBビッグBボス・新庄くんに画面で遭遇して嬉しかった。
  11月4日木曜日の午後、昼間にテレビはあまり見ないのであるが、虫の知らせか、偶々付けた午後2時の4チャンネル、日本テレビの『ミヤネ屋』で、新庄くんの真っ赤な記者会見生ライブを見てしまった。
  びっくりした。突然の監督就任だって!
  前任の栗山英樹さんが地味な方だったので、親会社の日本ハムは正反対のド派手な新庄さんのキャラクターに賭けたのだろう。
  一見、笑いを誘う様な監督就任ではあるが、ふざけているように見えて、彼の話す内容は真っ当なものだと感心した。スラリとしてハンサム、歯が異様に白いのはちょっと不気味だけれど、カッコイイ。エンタメ監督と名づけたい(笑)。
  その後の報道では、案の定、選手はそっちのけで、メディアに追いかけられているのは、着せ替え人形みたいにとっかえひっかえ衣装替えで現れる新庄くんである。
  それが、また絵になる。40代でも愛嬌があって可愛い。
  楽しませてナンボのプロ野球だから、こういう人選もアリだろう。
  私はクライマックスシリーズのファーストステージで、わが阪神タイガースが10ゲームも下の巨人に、ズタボロにやられて2連敗したので、ものすごく機嫌が悪かった。
  10本もヒットを打っている段階でたった2点しか得点していないとか、中軸は打てない、タイムリー欠如、エラーはする。巨人フアンで野球マニアの友人が電話をしてきて、彼は巨人命の人なのに、阪神の無様さに怒り狂っていた。
  私が阪神マニアなので共に憤慨してくれたのである。トラのバカ! 矢野のスカタン!
  9日10日とスポーツ番組には「着せ替えエンタメ監督」の新庄くんが頻繁に登場する。
  来年のプロ野球が楽しみだ。
  ところで。今、画面ではCSファイナルステージが行われていて、1台でNHK BS1のオリックス×ロッテ戦、1台でBS朝日のヤクルト×巨人戦を映している。
  巨人がヤクルトに4対0で負けている。
  ズタボロ阪神の仇、巨人が負けているので、私の機嫌は少し上向きである。
  この試合が行われている神宮球場のライトが、わが家のリビングから小さく見える距離にある。タクシーで飛ばして球場で見たい衝動に駆られる。
  さて、お終いにどうしても書かねばならないことがある。
  あの、天才的なルーキーの佐藤輝明くんが、ペナントレースの後半戦で、さっぱり打てなくなったのは、私の長い長いプロ野球フアン人生の中の、謎の第1位である。
  オープン戦であれだけ打ちまくったのに、前半戦でも20本以上ものホームランを打ったのに、どうしちゃったのか。そりゃあ、相手チームが佐藤くんのウイークポイントを必死で研究して、打たせないようにしているのは素人でもわかるが、ちょっと極端すぎないか。
  私が邪推しているのは、天才的な佐藤くんの資質を、ボンクラ指導者たちがいじりまくって、ダメにしているのではないのか。もっと彼をほったらかしにして、好きに打たせてみたらかえって打てたりしないのか。大山悠輔くんも、サンズも、何故かみんなダメになる。
  今、テレビ画面ではオリックスが1対0でロッテに勝った。ヤクルトも巨人に4対0で勝っている。9回を残すのみ、どちらも頑張れ。(2021.11.10)
                                                 (無断転載禁止)