「北京五輪開会式 重箱のスミをほじくる」

  午前中からフィギュアスケートの国別対抗試合を見続けたら、夜の開会式までに疲労困憊してしまい、開会式次第は辛口で見ることになった。
  全体の印象は時間が短くて助かったということ。2008年、夏の北京大会のマスゲームが長すぎて閉口した記憶があるので、今回の短めはよかった。
  私の感想はスッキリしていたという印象である。
 だが、直後の夜中に電話で話した友人の評価は、「昨夏の日本の開会式の真似をしていた」という激辛評だった。
  確かに、選手入場の通路で踊っているボランティアも、CG多用も、バトンタッチする複数の聖火ランナーも、花火も、夏の東京オリンピックのパクリとは言わないまでも、似ていた印象は免れない。
  ただし、地面を窓に仕立てて、他国の風景を映したアイデアや、最終ランナーが差し込んだトーチが、そのまま聖火になった方法は北京独自のもので、私は素敵だと思った。
  北京市が「何としても西欧社会から、近代国家である」と評価されたいと思っていることがあらゆる面で感じ取られ、それをしも、私は彼の国が、まだまだ後進性をシッポにつけていると思われて苦笑してしまったのである。
  世界第2の大国にしては考え方がセコイ。
  4千年の歴史のある中国が、西欧社会に媚びることはないのに、である。
  1つは音楽の使い方である。
  最初の方で出てきたトランペットの少年。血眼で音楽の天才教育を受けている子供を探しまくったのであろうが、私は子供に吹かせたことで、2008年の独唱少女が「口パク」だったことを思い出してしまって、白けた。
  「口パク」少女は後に他国にばらされたから、カッコ悪かった。何で失敗する懸念もある子供ばかリ重用するのかわからない。
  東京オリンピックでのソプラ二スタ・岡本知高さんの方が、ずっと素晴らしかった。
  さらに、国旗掲揚の場面で、青い上着に白いズボンの少年たちが、右手を挙げて敬意を表していたフリは、私にはまるで「ハイル・ヒトラー」の挨拶そっくりに見えた。まさか、習近平さんを彼ら自らが独裁者と考えているのではあるまいな。
  習近平さんと言えば、開会宣言の時、中国語がさっぱりわからない私には、最後の「カイモーン」というのだけが聴こえた。「へーえ、開会のことをカイモンというのか」と1つ勉強になったのである。
  音楽の使い方で、重箱のスミをほじくると。
  何故か知らないが、選手行進の間中、『泰西名画』ならぬ『泰西名曲』ばかりが使われていて、これが節操もない支離滅裂な使い方であった。
  例えば、ルーマニアの選手行進のBGMは『モーツァルトの40番交響曲の第1楽章』だった。40番の第3楽章が私の最も好きな楽曲なので、「へーえ」と思ったが、フランスのBGMが『ドボルサークの新世界』となると、わけがわからん。フランスだったら、ラヴェルかドビュッシーでしょ。
  マレーシアには『威風堂々』だって。
  ポーランドBGMが『チャイコフスキーのくるみ割り人形』とくれば、もっとわからん。
  そうかと思うと、ハンガリーには『ハンガリア舞曲』だから、ぴったりだったり、どうでもいいという調子である。
  スイスには『カルメンの中の行進曲』が使われていた。『カルメン』はスペインだよ。
  イタリアのBGMでは、『ヴィヴァルディの四季』が使われていて、これは当然である。
  まあ、適当に『泰西名曲』を繋ぎ合わせて、垂れ流したのであろうが、西洋音楽に造詣の深い方がやったとはとても思えなかったのだ。
  しかも、開催国で最後に行進した中国選手団のBGMのみ革命歌曲の『歌唱祖国』で、これも非常にわざとらしかった。
  馬鹿だなあ。全部を革命歌曲にすれば、国威発揚が全世界に発信できたのに。中途半端に『泰西名曲』を使って、かえってわざとらしさが倍加されたのである。もっとも、大抵の方々は、私のようにBGMなど気にしないのであろうが。
  それにしても、中国は大金持ちになったのに、軍人さんたちの帽子が超ダサい。北朝鮮の方たちの帽子とそっくりで、かぶり方もダサい。女性たちのファッションが、色彩のケバケバしさはともかく、選手先導のお嬢さんたちの衣装も垢抜けていたのに、軍人さんの帽子だけは毛沢東時代と変わらない。どなたか言ってあげれば?
  中継スタッフについてほじくると、NHKの一橋忠之さんは落ち着いていてよかったが、もう1人のアナウンサーの広瀬智美さんは、よほど開会式アナに選ばれたことがうれしいのかはしゃぎ過ぎだった。ケラケラと笑い、まるで民放のバラエティ司会者みたい。
  ついでに言うと、朝のニュース番組の中の、中国からの中継で、北京特派員の偉い方が、報告している途中で絶句してしまった。カンペが見えなかったのか、数秒間も沈黙!
  こんな中継には、お助けマンのディレクターがいないのか。
  また、選手行進の途中で、画面左下の国名表記が出ないことがあった。
  私は自分の目をこすって、2台のテレビを確認したが、確かに数か国の国名が出なかった。これって、ハードのミス?
  ともかく、開会式は終わった。まあまあ、成功の部類である。
  こんなことより、全世界で報道された「反北京五輪」のデモのニュースが気にかかる。
  一方で、羽生結弦くんのオリンピック制覇も気にかかるし、当分、私はテレビ漬けである。体調が悪いので、17日間、視聴できるか心許ないけれども。
  コロナがなくて、会場一杯の観客で選手たちに演技をさせてあげたいと願うのは、私だけではあるまい。残念である。
  みんな、頑張れ!(2022.2.5.)
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