筆者は昔々、オペラとかミュージカルは敬遠していた。
何故なら、芝居は芝居、音楽や歌は音楽や歌、とはっきりしているのが好きで、芝居と歌が混じっているオペラやミュージカルに偏見があったのである。
ところがある時、劇団四季で『異国の丘』を上演した。
わが1族に戦争で亡くなった人はいなかったのに、何故か『異国の丘』の歌を聞くと涙が止まらず、このお題のミュージカルは見に行かねばなるまいと思い、出かけたのである。
当時、ビジネスアイだったか何か、新聞のコラムに連載を持っていて、そこに、『異国の丘』評を書いたような気がする。
数日後、かの有名な劇団四季の御大、浅利慶太さんから電話がかかってきた。
「取り上げてくださって有難うございます。今後、劇団四季の全演目について、ご招待いたします」というような有難いお誘いであった。
毎回はとても行けないので、丁重にご辞退したが、『キャッツ』を始め、新宿南口のテント劇場の頃から劇団四季とはお付き合いがあった。
最初は某有名人の奥様のお誘いで、『キャッツ』の特等席に座ったら、ステージ上の猫ちゃんが突然降りてきて、筆者は顔を撫でられてびっくりした。
「へーえ、ミュージカルって演者が降りてくるんだ」と驚いたのである。
これが初体験だった。
今回、その劇団四季出身の著名な方々が歌う、帝国劇場の建て替え最後の番組を完聴きしたのである。
帝劇は1911年に建設された。従って今年で114年である。
今日を最後に帝国劇場は閉館し、建て替えられて、再開は5年後という。
今回、≪さよなら 帝国劇場最後の一日≫という題で、常連のスターたちが歌った。
このさよなら公演について、何故か知らないが、筆者のパソコンに、毎日のようにお誘いメールが来ていたのであるが、この所多忙で行けなかったので、テレビに噛り付いて見たのである。
とても楽しかった。
帝劇の階段などからの生放送で、メインの歌手たちは次の通り。
司会の水ト麻美さん。井上芳雄さん。市村正親さん。堂本光一さん。その横に大地真央さん。井上さんはご常連のプリンス。
市村さんは出演33年に及ぶレジェンドで、初めて知ったのだが、『モーツァルト』では、息子役は何代も代わったのに、父親役の市村さんだけは総て彼が演じてきたのだそうだ。
生で観たかった。
企画内容はなるほどと思わせる。
「日本人が好きなミュージカルナンバー30」である。
なるほどとは思ったが、筆者が聞きそびれたのか、どういう相手が投票した結果なのかわからない。だから、順位には多少異論がある。
例えば、ビリの30位の歌が、かの有名な『ドレミの歌』だと!
筆者は『サウンド オブ ミュージック』の映画を、当時、封切り前に観ているので印象が強く、「えーっ、ドレミがビリ?」なのだ。
跳んで、26位は『シャル ウィ ダンス?』。これも下過ぎる。かの大ヒット作なのに。
25位は『踊り明かそう』
23位は『愛あればこそ』、言わずもがなの『ベルサイユのばら』から。
ところどころに「レジェンドヒストリー」が挟まる。これが面白かった。
例えば、松本白鷗さんは『ラ・マンチャの男』を54年演じたとか。ほんとかいな。
筆者も観に行った。
市村正親さんは20歳の時に、『ラ・マンチャの男』を帝劇に見に行って、1番後ろの席で観たとか。筆者は確か2階席で観た記憶がある。
この中のナンバー、『見果てぬ夢』をMC3人で歌ったのであるが、他の2人の後で、井上芳雄さんにやってくると、驚くほど発声が違っていた。さすがは東京藝術大学声楽専攻出身である。ただのミュージカル歌手とは1線を画しているのだ。
20位、『雨に唄えば』
17位、『チムチムチェリー』
16位、『虹の彼方に』は『オズの魔法使い』から。
またまた、レジェンドヒストリーがあり、帝劇での公演回数の第1位は、何と堂本光一くんであった。題名は『SHOCK』。
若い世代に支持されているのだろうが、筆者はチンプンカンプンである。
何しろ、堂本さんは2千回を超える公演回数で、針金1本で空中を飛んだり、22段の階段を転げ落ちたりするのだそうだ。まさにショックね。
13位は『トゥナイト』、言わずもがなの『ウエストサイド ストーリー』から。
11位は『エーデルワイス』
8位は『ありのままで』、大ヒットの『アナと雪の女王』から。
6位はスーザン・ボイルさんで有名になった『夢やぶれて』。
またまた、レジェンドヒストリーから。鹿賀丈史さん登場で、彼は『レ・ミゼラブル』のジャン バルジャンの最多演者である。
驚いた話では、1995年にロンドンに呼ばれて、全世界のジャン バルジャン役が、それぞれ母国語で歌わされたという。映像もあった。
3位はご存知『オペラ座の怪人』でこれは納得。
2位は『メモリー』で『キャッツ』から。
栄えある第1位は『民衆の歌』であった。もちろん、『レ・ミゼラブル』の中の有名ナンバーである。帝劇の再開まで、筆者は生きていられるかしら(2025.2.28)。
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