事実かどうか知らないが、ショパンコンクールでは、日本のNHKだけが裏の取材も許されているそうだが、筆者が昔から耳にタコが出来るほど聞かされた、カネやモノにまつわる薄ぎたない風評については、今回無視することにする。
それはそれは聞くに堪えない風評の数々があるのだ。
例えば、審査員の主だった方々に、グランドピアノをプレゼントした日本人がいたとか。
貧乏な(失礼)彼の国の関係者に、金満日本人が豪華なプレゼントをして、コンクールの審査に手心を加えてもらった話とか。こんなことは出来るはずがないのに。
筆者は全く関係していないので、事実かどうか知らないし、関心もない。
落ちた応募者の関係者が流している流言飛語のたぐいだと思っている。
さて、ドキュメントに戻ろう。
600人を超える応募者の中から、ふるいにかけられて残った84名の若きピアニストたちの中で、13名が日本人だった。
ここからドキュメントは始まる。
その中でも最も若いピアニストたちを、カメラは追いかける。
20歳の島田隼くんはジュリアード音楽院の奨学生であるが、学校で教えているのは、まだ27歳のアメリカ青年。エリック・ルーくん。
ここで、筆者は「へーえ」と思った。
他の国の音楽大学でも、優秀な学生が助手みたいになって、後輩を指導することはある。
エリック・ルーという名前から考えても、彼は東洋系だろう。
アメリカは、移民の国であるな、と思いながら見ていると、ルーくんは結構ハイブラウなことを言っている。
別の日本人が2人出てくる。
まだ、たった15歳の中島結里愛さんは東京藝大付属高校の1年生である。
如何にも教育ママらしいお母さんがつきっきり、遠いポーランドくんだりまで母親もやってきてご苦労様、ちょっと意地悪を言うと、他の家族は迷惑な話だ。
練習しているところがたびたび出てくる。
ははあ、作り手は15歳という1番の若手が入賞するところを狙っているな。
恐らく、事前に有望株をリサーチして、その中でも話題になりそうな若い子に、作り手は目を付けているのだ。
演奏より前に、ステージに並べられたグランドピアノを選ぶ場面が面白かった。
スタインウェイやカワイやヤマハや、並べられた5台のピアノを試弾して、どれを使うが決めるのであるが、この時間がたったの1人15分ぽっち。
曲もまともに弾かずにピアノ選びとは酷である。
さて、いよいよ1次審査だ。
撮影を許されたNHKのカメラは、「えーっ、こんな所から撮っていいの」と聞きたくなるような反対側からも演奏者を写していて驚く。
ふるいにかけられた人たちなので、みんな上手いが、筆者から言わせてもらうと、音楽どころか、鍵盤相手の格闘技みたいである。低音をげんこつで叩いていたりする。
作り手が期待した若い2人の日本人たちは、残念ながら1次で落ちちゃった。
納得できない島田くんは顔が引きつっていた。
「最年少のスター」を狙っていた作り手は、2人とも落ちちゃったので、別口の日本人を探したところ、日本人のお顔をしてはいるが、生まれも育ちもドイツ語圏の中川優芽花さんにカメラを引越しさせた。彼女は23歳。
そりゃあヨーロッパの魂をわかっている方であろう。
かつて、ショパンコンクールで2位になった内田光子さんが、お父様のお仕事の都合で、子供の時からヨーロッパ育ち、誰かが、「あれは日本人じゃないよ」と評した。全く同じ。
それにしても、中島さんと言い、中川さんといい、どうして2人とも、漢字3つのキラキラネームなのだろうか。
意地悪筆者はまたも申す。親御さんが女の子には華やかさを込めて、キラキラネームをつけるタイプの方たちなのではないか。笑。
だから、ピアノを習わせ、お尻を叩き、有名ピアノコンクールに連れてゆく? ごめん。
結局、島田くんも結里愛ちゃんも、優芽花さんも、3人とも、揃って討ち死にした。
日本人でファイナリストになり、順位の付く成果をゲットしたのは、30歳になる桑原志織さんだけであった。
悪いけど、筆者が最初から予想したように、応募資格ギリギリの桑原さんなど、作り手は最初、鼻もひっかけなかったのではないのか。
だが、17人の審査員がつけた点数が、年齢に関係なく、優れたものに高得点を与え、それが明解な合格という結果を生んだ。
1つでも若い子を狙った作り手は、本当の意味で音楽の何たるかを知らないと言える。
皮肉な結果である。
加えてもう1つの傑作な結果。
ジュリアードで島田隼くんに教えていたエリック・ルーさんが、10代の時に受けて4位か何かだったのが、今回も挑戦していて、なんと第1位、優勝したのであった。
スマホで結果を見ていた生徒の島田くんは、手を叩いて大喜び。
またもや中国系青年の優勝である。ポーランドの審査員たちは歯ぎしりしてる(?)
本来、クラシック音楽とは、かように競馬みたいな世界とは異質なものであったはずなのに、と筆者は考える。ま、どうでもいいけど・・・。
5年に1回しか来ないショパンコンクール。
その後、ブーニンさんはどうしていらっしゃるのだろう。(2025.11.10)。
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