「阪神タイガースの優勝・御堂筋パレードを現地で見てきた。抜けるような青空に真っ黄色の銀杏並木、3台のオープン車上では、藤川監督以下スターたちが手を振っていた」

 実はこのところ、長く筆者は体調不良であった。心臓の動悸がひどく、1日中、気分最悪で何をする気も起きない。しかし、熱はない。
 2カ月に1回、循環器内科の専門医に血液と尿検査をしていただく習慣は何年も続いていて、今回も週初めの予約診察を受けに出かけたのである。
 下心は、22日に行われる大阪の御堂筋での阪神タイガース優勝パレードを、ナマで見たいというとんでもない希望を、叶えられるかどうか、主治医にお尋ねしようと思っていた。
 検査当日、主治医は上機嫌で、「アミラーゼが相変わらず高いだけで、血液も尿も完璧!」とのご診断である。
 恐る恐る週末に大阪に出かけてもいいかとお尋ねすると、「ああ、行ってらっしゃい、行ってらっしゃい、気を付けてね」だと。
 筆者は近頃体調が悪いので、遠出は自信がなかったのに、主治医はこともなげに言う。
 「私、超高齢ですけど・・・」と内心ブツブツ思ったが、医者の反応で途端に元気が出てきた。行こう‼
 仲良しの関西女性と2人、21日に泊ったのは御堂筋のド真ん中、超高層の高級ホテル、ザ ロイヤル パークホテル アイコニック大阪御堂筋である。
 1階から14階まではオフィスビルで、15階以上がホテルという、まだピカピカの新しい建物である。泊っているのは外人が多い。
立ち上がると、筆者の顔が女性のお尻の高さという(笑)白人の大女に何人も遭遇する。
 その日は素敵なホテル内レストランで夕食を取り、ギターとバイオリンの生演奏も聴く。
 さて、22日の朝だ。
 パレードの始まり地点で10時からセレモニーがあったが、われわれがホテル前から動かないことにしたのは、前の晩、美しいイルミネーションに飾られた御堂筋を、16階の部屋から見下ろして写メで送った別の友人が、すぐさま返信をくれた内容に影響された。
 それには、「明日は天気は上々で大混雑が予想されます。揉みくちゃになって怪我をなさらないようにくれぐれも気を付けてください云々」と書いてあった。ハイ気を付けます。
 いや、ほんと。観客は20万人を越えたのである。
8時過ぎにホテルを出てすぐ前の御堂筋まで歩くと、もう、ユニフォームで揃った警備の人たちが、赤白の棒と△コーンで関所を作っている。
 ほぼ3時間前だというのに、ぞろぞろ人が集まり始めた。
 御堂筋はホテルのある淀屋橋駅近くでは、道幅が36.5メートル(普通は44m)あり、町名は淡路町と書いてあった。車道、並木が植えられた緑地帯、歩道と美しく、緑地帯のない東京の銀座通りよりも素敵である。
 車は既に通行止めで、関係車両しか通らない。
 まず初めに、警察犬がクンクンと匂いながら緑地帯の銀杏の根元あたりを嗅ぎまわって通り過ぎた。安倍さんが亡くなった事件から厳しくなったのに違いない。
 次いで、巨大な貨物車が目の前に止まり、中から高さ約1.3m、幅2mほどの金属パイプでできた柵が次々に降ろされて、赤白の棒の向う側にびっしりと並べられてゆく。
「この高さじゃ、暴漢が来ても簡単には跨げられないだろう」と余計な想像を巡らす筆者。
 それから延々と立ったまま、パレードを待つこと3時間‼‼‼ 足が棒である。
 慣れた阪神フアンの人たちが、小さな折り畳み椅子を出して座ると、すかさずマイクで注意が飛んで来た。「座らないでください!」ひぇー。
 近くの阪神フアンたちと楽しくおしゃべりする。
 姫路から来た親子の3人連れは、1歳2カ月の坊やと両親で、赤ちゃんの機嫌のいいこと、OHYAMAと背中に書かれたタイガース・ユニフォームを着ている。こんな豆チビ時代から筋金入りの虎フアンに仕立てられてゆくのだ。写真。
 もう1組は福井県から来た19歳と20歳の青年たち。2人ともタイガース・シャツを着ていて、礼儀正しい。プロ並みのカメラを持っている。お仕事の内容は聞きそびれた。
 好青年たちの写真を撮ってあげて、即座に彼らのスマホに送る。おせっかいオバサンと化す筆者である。
 11時を過ぎて、漸くパレードの先駆け車が近づいてきた。
 脇にデッカイ文字が書かれている。
 「阪神タイガース、祝 セ・リーグ優勝、一年間ありがとうございました」
 さて、いよいよ1号車が来る。選手やコーチらが乗っているのは3つの車である。
 先頭車のイの1番には藤川球児監督のニコニコ顔が見える。
 セレモニーには行かなかったが、藤川さんはお式で、「連覇は必ず成し遂げます」と仰ったそうである。頼みますよ。
 1号車の藤川さんのお隣りにはコーチの安藤さんのお顔が見えた。
 他には近本さん、及川さん、村上頌樹さん、石井大智さんなど、撮影するのに焦って、見るより写すのに必死。
 2号車、3号車では、意識してはっきり応援できたのは、才木さんと大竹さん。
 ピーカンの朝日に照らされて、みんなちょっと草臥れているが笑顔だ。
 筆者が見なかったセレモニーが長かったので、疲れちゃったらしい。
 東京から大阪くんだりまで、わざわざ、このリアルを感じるために来た、わ、た、し。
 来てよかった。ホテル代、新幹線代など、散財したけれど。
 かつて、オリンピック選手たちのパレードを銀座通りで見たことはあったが、わが愛する阪神タイガースの選手たちは、1味違うのだ。それこそがフアン心理のなせることだろう。
① 最大の功績は抜けるような秋晴れのトラ天気。
② 優しい20万人のパレード見物のフアン観客。筆者もその1人。
③ 何といっても、車上の藤川さん以下頑張ってくれた全トラ・メンバーたち。
来年も頼みまっせ―――っ。(2025.11.23)
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