今回まで、私の中では、オリックス・バファローズというチームは、ほとんど無名に近い存在だった。
パシフィック・リーグでは、長く西武ライオンズのフアンであったし、前身の西鉄時代から、長兄から聞いた数々のライオンズ選手の武勇伝が好きで、引き続いて西武ライオンズが1押しのチームだった。人間を長くやってきたので、「神様、仏様、稲生様」の頃さえ知っているライオンズ・フアンである。
だから、以前は「オリックス?」なにそれ? てなものだった。
というのは、毎度お騒がせしているように、私はセ・リーグの阪神タイガースが命なので、パ・リーグなんかどうでもよかったのである。
今回の日本シリーズ、CSで負けちゃった阪神タイガースも出ないし、どうしようかと思っていたのだが、見てよかった。
間違いなく、近来稀に見る素晴らしい日本シリーズだった。
しかし、見る前は冷たいものだった。
相手の東京ヤクルトスワローズは好きでも嫌いでもないし、何しろわずか22歳の3冠王がいて話題に事欠かないし、高津監督は見るからに頭のよさそうな紳士なのは認めるが、阪神と同じセ・リーグのチームだけれど、ヒールでもペットでもないチームには関心が湧かなかったのだ。
一方、「なにそれ?」のオリックスに関しても、贔屓の選手もいなかったから、あまり「見よう」という気が起きなかった。
ところが、である。
第1戦で山本由伸さんがいきなり打たれたり、調子が悪そうだったりして、気になりだした。そればかりか、オリックスの選手たちに開眼したのである。
今まで知らなかったのはバカだったと思うほど、素敵な選手がいた。
好感の第1は、選手たちがみんなお地味だけど(杉本さんは例外)、すごく真面目そう。いつも脚光を浴びている巨人の選手のように「俺は有名人だ」臭がない。悪いけど、謙虚で平凡な普通の人・感がある。スターの吉田正尚さんにして、しかりである。
吉田さんは横丁でよく見かけるお兄ちゃんみたい。普通の人っぽい。
だが、よく見るとスター性を秘めた原石たちがオリックスには結構いるのがわかった。
私の好きなイケメンもいた!
まだ、たった24歳の中継ぎ投手、山崎颯一郎くん。190センチの長身で、日本海側出身らしく色白、端正な横顔を見せて速球を投げ込む。最終戦では打たれたが、ダッグアウトに引っ込んだ後も、悪びれることなく応援していた。
まだまだ粗削りだが、ガタイがいいので、精進すればスターになるだろう。
中学3年の頃に、すでに180センチも身長があったそうだ。私に5センチ頂戴(笑)。
もう1人、ピッチャーの宮城大弥くん。彼は渋みのある大ベテランという顔をしているが、なんと2001年生まれのまだ、たった21歳!
2001年生まれなど、子供ちゃんと思えるが、堂々たる左のエースだ。
25日の日本シリーズ第3戦では、ヤクルトの山田哲人さんに3ランを打たれて負け投手になってしまった。彼は小柄(171センチ)だし、一度も経験のない中4日でのシリーズ登板で、私は心配した。プレッシャーに負けるのではないかと思っていた。
王手に直面しているヤクルトが、猛然と襲い掛かってくるのではないかと心配していたら、どうしてどうして、物凄い度胸。4回の裏、3番の山田哲人さん、4番の村上宗隆さん、5番のオスナ、怖いこの3人を3者凡退に斬って取った。凄い投手だった。
ところが、やっぱり、21歳の若者だ。5回の表に2アウト満塁で杉本裕太郎さんがタイムリーを打った時だ。
横で裏の肩慣らしをしていた宮城くん。あの、渋い顔から一転して嬉しそうに破顔一笑しつつグローブを叩いて喜んだ。本当は苦しかったのだろう。
5回まで完璧な無失点で抑え、6回から交代した。
何が凄いと言って、エースの山本由伸くんを欠き、彼で2勝が読めるのを失ってなお、2敗後から4連勝したオリックスの胆力に感心しきりであった。
私はネットではなく、第7戦は地上波のフジテレビで試合を見ていたのだが、解説が元ヤクルトの古田敦也さん。ゲストにソフトバンクの千賀滉大くんも来ていた。
古田さんについては、この日の朝、午前5時50分から始まるテレビ朝日の『サンデーLIVE』にも出演していた。
東山紀之くんが司会する早朝の生番組で、日曜日の朝、早起きする私はいつも見ているのだが、この時すでに、ヤクルトはオリックスに王手を突きつけられていたので、古田さんの柔和な顔が、日本シリーズに関しては微妙に引き攣っていたのである。
元ヤクルトのスターだった古田さんを劣勢の時にゲストで呼ぶのは残酷だ。
そうでなくても解説者は公平に喋らないといけないとバイアスがかかっているのに、王手がかけられた時点で、公平に喋るのは古田さんもやりにくかっただろうと同情する。
さて、今回のプロ野球日本シリーズ、東京ヤクルトスワローズ×オリックス・バファローズの試合は、第3戦の1つを除いて、総て僅差の好ゲーム揃いだった。
なんとなく剽軽な杉本裕太郎さんがMVPというのは象徴的である。
4番の吉田正尚さんに神経をすり減らして打ち取った後の5番にやられる。
ヤクルトの方も、4番の村上くんにホームランを打たれないように神経を使った直後に、オスナにポカーンとやられる。
どちらのチームも同じ構図であった。
それほど、過酷な戦いだったということだろう。
いずれにしても、本当に面白い試合を見せてもらった。
両チームの監督、選手、オールスタッフに大拍手。パチパチパチ。(2022.10.31.)。
(無断転載禁止)