「国連の人権理事会までが出てきた、少年たちに対する性加害の異様」

 筆者が何十年も選考委員の末席に加えさせていただいている連続ドラマのコンクールで、2023年度、4月~6月期の作品の中に、高得点で評価されているユニークなものがある。
 フジテレビ放映の『あなたがしてくれなくても』である。
 30代の何組かの夫婦の日常を細やかに描いているのだが、主人公の女性は夫とのセック
スレスに悩んでいる。   
 筆者は読んでいないのだが、この作品の原作は青年漫画というジャンルで以前から大人
気のもの、既に単行本が10冊以上も発行されているそうである。
 映画ならともかく、お茶の間のテレビで、まだ、子供も起きているかもしれない時間帯に
放映される作品が、堂々と夫婦のセックスについて描いているとは、驚きであった。
 一昔前なら、とてもテーマ自体がパスであっただろう。
 特別なAVの世界は別として。
 こういうテレビドラマが作られるようになった背景には、今時の若い夫婦の生き方が影
響している。
 結婚しても、今の妻は昔のように専業主婦で家になんかいない。
 男と同じように外で働いてキャリアを志向すれば、肉体的にも疲れるし、帰宅時間も遅い
となれば、夫婦お互いがセックスどころではないのかもしれない。
 子供がいれば、狭いマンションの中で愛の抱擁どころでもない。
 こうしたドラマが堂々と陽の当たる場所で放映される時代になって思うのは、セックス
の問題が、昔のように隠微なテーマではなくなってきたことだ。
 それどころか、フィクションよりも遙かに現実社会の方がおどろおどろしくなっている。
 しかも、SNS時代はあっという間に、なんでもかんでもあからさまに伝えられる時代な
ので、一般人でも、昔だったら口に出すのもはばかった「セックス」という言葉を、日常茶飯に平気で使うようになっている。
 そこで今回のテーマである。
 現実はフィクションを越えている。
 今、話題が世界的になってしまったエンターテインメント芸能界の性被害の問題である。
 今から何十年も前の時代に、一流週刊誌の「週刊文春」が、ジャニー喜多川さんの性癖について長い記事を書いた。
 ディテールは忘れてしまったが、筆者はその時まで、迂闊にも男性の少年愛がどんなものか理解していなかった。
 ましてや、夜な夜な美しい少年のベッドに、大人の男がやってきて、口淫したり、アナルセックスをするなどということを、想像したこともなかった。
 ジャニー喜多川さんは少年のベッドに足元から入ってきて、少年の陰茎を口の中でしごく。思いきり弄んだ後で、出てゆく。後に仕事やお金(1万円)がついてきた。
 どんな経験もない無垢な少年でも、思春期の身体は反応して、しごかれて勃起した男性器は射精してしまう。
 ジャニー喜多川さんは口の中の精液を洗面所で吐き出し、口をゆすいで出て行ったそうだ。気持ち悪い。気持ちが悪い。
 思えば筆者など、何にも知らないに等しく、「男が男の子を犯す?」ことを正しく認識したこともないお目出度い一般人であったから、ただひたすらビックリ仰天だった。大人の男同士のゲイについては、物書きであるから多少は調べて知っていたが。
 世間で言われているように、喜多川氏に関する様々な性加害は、なぜか無視され続けた。
 第一線で稼ぎまくっている美少年たちを輩出している会社の、ボスの悪口などを書いたら、それこそその媒体は「不買運動」の標的にされる、との懸念からだったようだ。
 人気のある少年たちを出演させてもらえなかったらテレビはアウト。
 新聞もテレビも後追いしなかった。
 ホント、どの大手メディアも無視した。
 われわれ一般人も「変だな」と思いながら、看過した。
 芸能界にあまり興味もなく、強いて言えばエンターテインメント音楽が苦手な筆者は、「そもそもいかがわしいこともある世界でしょ」と、無知な世界の裏側に関心がない風を装った。
 実は、きっかけの文春砲は大スクープだったのに! ほとんど無視された。
 それがここにきて、ひっくり返りつつある。
 雨後の筍のごとく、何十年も前の、ジャニー喜多川さんによる性被害の相手として、元美少年たちが告白しだした。一番驚いたのは、カウアン・オカモトさんという、色白の美青年が堂々と自分の言葉で告発した時、「この方、誰?」と注視した。
 こんなタレントさんは見たことがなかった。
 彼も餌食になったのだ。さもありなんと思った。ご両親がハーフの方で、どおりで混血の美だ。
 もっと驚いたのは大作曲家・服部良一さんのお身内の方が、同じ音楽世界で、小さい時から危ない目にお会いになったという事実である。
 外国メディアが報じなければ、まだまだ、公然の秘密としてスルーされていた。わが国のガラパゴスぶりは世界中で笑いものになっていたはずである。
 既に、「たかが、娯楽の世界のこと」ではすまされなくなった証拠に、国連の人権理事会の作業部会メンバーが7月下旬に調査に来て、長い記者会見を行った。
 黒人の逞しいトップと、滑舌見事な女性委員が立て板に水のスピーチ、流石は世界的組織の人たちである。残念ながら、司会の人、朝日新聞の論説委員(女性)という人が下手くそで、最も大事な2人の委員の名前さえ一発で正確には紹介できなかった。しかも、最初の紹介の時、ボスを女性の方と間違えていて、「アホか」と思った。
 内容については長いのでユーチューブ録画をご覧あれ。
 長い間、アンタッチャブルで報道もされなかった若い人たちへの性加害が、勇敢な週刊誌の筆によって先鞭をつけられ、明らかにされつつある事態の推移をこれからも見守りたい。(2023.8.10)。
                                                 (無断転載禁止)