「過去のドラマの再放送で、現在のリアル風俗と異なる細部をあら捜しする楽しみ『踊る大捜査線THE LAST TV~サラリーマン刑事と最後の難事件~』から」

  10日の夜に放送された『踊る大捜査線 THE LAST TV』(フジテレビ)は、2012年に制作されたドラマである。
  2012年の9月1日、土曜日の午後9時から午後11時過ぎまでというスペシャルドラマの王道『土曜プレミアム』の時間に放送された作品だ。
  当時、この『捜査線』シリーズは大人気作で、筆者もコラムで取り上げた記憶がある。
  今から12年前というと、干支、ひと回り前だ。
  如何にフジテレビが力をいれていたかわかるのは、作品に出てくる大勢のエキストラの数で、ファーストシーンの警察官たちによる交通教室の場面からして人間だらけ。
  最後の結婚式の場面でも、式に呼ばれたお客のエキストラが大ホールにいっぱいいる。
  ケチな筆者はすぐお金のことを連想してしまい、「この作品、トラ(エキストラの意)のギャラが1人5,000円として、300人動員していると仮定すれば」
  「5,000×300=1,500,000、150万円かあ」となる。多分もっと多いだろう。
   エキストラの数の多さだけで圧倒される。
   この再放送を見る前には、多分、大きいものでは自動車、小さいものでは電話やパソコン類が古くて、時代を感じるだろうと考えていたのだが。
  案外、道具類の古さでの違和感は気にならなかった。
  いちばん気になったのは、当然ながら俳優さんたちの年齢である。
  ギバちゃんが若い。
  髪は黒々していて、生え際も後退していない。
  警察庁長官官房審議官という偉いさんで、湾岸署にやってきては指揮を執る室井慎次が柳葉敏郎さんの役柄である。
  フジテレビの、このすぐ後の番組、『だれかtoなかい』(フジテレビ)に現在の柳葉さんが登場しているが、頭が白い。
  白髪の上に生え際も少し後退している。
  『踊る大捜査線』の中のギバちゃんは髪も黒々して、生え際もくっきりだ。
  室井慎次は人気者で、主演の青島刑事(織田裕二)を食うほどで、室井が主演の映画が公開されているようだが、筆者は見ていない。
  感心するのは、現在の柳葉さんが、顔の皮膚や目鼻立ちが年寄臭くないという事であるが、俳優業だけに皮膚のケアに気を付けているのであろう。
  女優さんであったら髪を染めるであろうし、薄くなったらウイッグの出番であるが、男優は自然のままで恬淡としているが、顔には神経を使うのだ。
  映像とは残酷なもので、12年前の作品のディテールは変えようがないのだ。
  それでもテレビ局はちゃっかり再放送で稼ぐ。
  放送直後に筆者が感じたのは、画面全体の絵のぼんやりとくすんだ印象である。
  放送スキルがこの12年間で飛躍的に進化したのであろう。
  勿論、デジタル技術の大変化が画面に表れている。
  湾岸署の登場人物たちは、ほとんどがお仕着せの制服なので変化が余りない。
  私服を着ている女性、深津絵里さんは平凡なセーター姿なので12年経っても変化なしである。彼女は湾岸署刑事課盗犯係主任・巡査部長の恩田すみれである。
  『THE LAST TV』では、審議官のギバちゃんと結婚しろと上司に迫られる。
  あまり、色恋のシーンのないこの作品に、ほとんど紅一点の存在である彼女の結婚話が出てきたので、筆者は「おやおや」と身を乗り出した(笑)。
  美人の深津さんを活用できるかと思ったら、2人とも「フン」と言って結婚話を拒否し、やっぱり色恋の方には行かなかったから残念であるというか、予想通りというか。
  筆者はいつもPCで原稿を書いていて、女にしてはメカに強い方だと自認しているので、多分12年前の作品にはPCは余り活躍しないだろうと思っていたが、どうしてどうして。
  PCでワルを監視したり、画面分割したり、古さは感じなかった。
  ただし、スマホとか携帯電話などの形態が違っていたような印象だ。
  街を走る自動車は昭和30年代から50年代の様に、セダンの形が劇的に変わることがなくなったので、気にならなかったが、予想外に気になったのは街のビルである。
  街のビル群が何となく違う。
  超高層ビル群の数が少ないのか、具体的に指摘できないが、令和の今と平成の12年前とは異なっている。
  パリの様に、巨大なパワーシャベルやその他の重機を使って、建物の中はリホームを許されるが、外観の石造りは手を付けることまかりならん、と厳しく規制されている都市と違い、わが国はあっという間にぶっ壊して、建て替える。だから、景観が全く変化する。
  この前に書いた大阪梅田駅周辺を見ろ。
  めちゃくちゃ変化しているので、都市に対する愛着とか情感とかが殺されてしまう。
 「新しければ良い」という日本人の感覚を筆者は貧相だと思う。
  だから、この国では、人間も1つでも若い方がいいというような、情けない考えがまかり通る。以下省略。
  最後に青島俊作役の織田裕二さんについて。
  脱サラ刑事の青島が、3枚目で、少々ドジなのはお馴染みの通り。
  この12年前の作品でも、署員からバカにされている風なのは見慣れた風景だが、『THE LAST TV』では、最後の最後に華をもたせてくれている。
  殺人マシーンの中国人花嫁と、花婿中国人の一触即発場面で、青島が花婿に近づきながら手を出したら、女に近づけていた拳銃を花婿が手渡すのだ。青島君、一世一代の大活躍!
  だけど、むさ苦しい長髪には時代を感じる。今の若者はみんなバカみたいに前髪垂らしのおかっぱスタイルである。画一的な今の方がバカっぽいね。(2024.11.11)。
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