「189センチの長身から見下ろして、ターゲットを追い詰めるテレビ司会者の濃い顔がド迫力の『キャスター』(TBS)を連続視聴した」

 このところ、阿部寛さんはTBS御用達みたいだ。
 『VIVANT』もそう、『下町ロケット』もそう、『ドラゴン桜』もそうだ。
 NHKの『大河ドラマ』にも沢山出ているが、民放の連続ドラマはTBSが圧倒的に多い。
 何しろ身体の大きさと、あのインパクトの強いお顔のせいで、印象が強烈である。 
 「日曜劇場」に阿部さんが主演すると、視聴率がいいのかもしれないが、観客の方も開始の前から、期待してしまう。大したオーラの持ち主である。
 ガタイの大きさと、お顔の濃さにも拘わらず、阿部さんは優しい人なのであろう。
 TVカメラは怖いもので、他者を演じている人でも、その役者本人の持って生まれた<地>をそこはかとなく映し出す。
 阿部さんの<地>は絶対に優しい人、どちらかと言えば、お人好しの部類に入る好漢であると思う。
 スターであるから悪役はやらないので好都合であるが、もし、本当の悪役をやれば、どうなるか。
 筆者も阿部さんは大好きだが、1つ不満があるとすれば、彼の滑舌である。
 セリフが籠って聞き取りにくいことがある。
 スタッフの音取りにひと工夫すれば、もう少し聞き取りやすくなるのではなかろうか。
 4月から始まった『キャスター』の主人公・進藤壮一(阿部寛)は、1癖も2癖もあるちょっとひねたフリーの報道マンである。
  公共放送の記者から報道番組のキャスターになり、民放JBNの会長(高橋英樹)に引き抜かれて、NEWS GATEのメインキャスターになった。
 民放JBNでは、新参者なのだが、開始直後から態度はデカいし、周囲の人はお構いなし。
 ジェンダーばやりらしく、スタッフには女性が多く、編集長・市之瀬(宮澤エマ)や総合演出の崎久保華(永野芽郁)ら、主要ポストには女がついている。
 近頃、筆者はサッパリTV局に出入りしないのでわからないが、本物のTV局もこうなのだろうか。しかし、ドラマを見ていると、この総合演出お嬢さんは、結構男どもに指図されていて、どこが(総合演出)なのか、と突っ込みたくなる。
 ただし、永野芽郁さんは色白で肌がきれいで、主演級のポストに相応しい。
 彼女が演じる崎久保華は、バラエティ畑で功績があったので、報道に来たが、進藤キャスターに振り回されてアタフタしている。
 もう1人、主要メンバーがアシスタントディレクターの本橋悠介(道枝駿佑)で、進藤と崎久保の後をくっついて追いかけている若い奴。
 道枝くんはイケメンぶりで有名らしい。
 若い視聴者はイケメンの道枝くん目当てに視聴するのが狙いなのか、出ずっぱりである。
 第1話「型破りなキャスター ぬるい番組をぶっ潰せ 生放送で悪を裁く!」は1時間半になんなんとする長尺であったが、最初の視聴者惹きつけ場面が終わったら、なんと、CMだらけであった。
 これでは、ドラマの間にCMがあるのではなく、CMの間にほんの少しずつドラマの細切れが入れられている有様。見ていてイライラした。
 但し、筆者が視聴したのは第2回目の前日(19日)の再放送であったが。
  13日は他局を見なければならなくて、録画は撮ったが生では見られなかった。
 心臓発作で倒れた民自党の羽生剛官房長官(北大路欣也)の乗った救急車が、関東医科大学病院と明慶病院のどちらに入ったかとか、官房長官と、別の入院中の坊やが、たまたま、同じ珍しいRHマイナスAB型血液で、官房長官用に希少血液は集められたのではないか、とか、ディテールに思いっきり上手く医学情報をかき集めで使っている。
 それと、大物キャスターの進藤壮一が、崎久保華に垂れる教訓みたいなセリフが面白い。
 曰く。
 「報道に携わる者は、毎日がエイプリルフールだ」つまり、「嘘をつくのは当然だ」ということである。
 曰く。
 「君はまだ、報道の恐ろしさを知らない」
 と、自分で崎久保に教訓垂れた通りに、最後の本番で、RHマイナスAB型血液が官房長官に集められて坊やが死んだ、という事実とは違う、老婆が亡くなった話として喋る。
 これは終りの方で、誠実な医者が空港で告白したのが、官房長官も坊やも、両方が助かるように頑張ったが、幼い子の方が亡くなってしまったという事実を筆者は語っているのだ。
 強烈な口先3寸に見えるが、実は計算があって(嘘も方便)を使っている進藤キャスターより、誠実な医者の行為の方を、最後に出して(人間として価値がある)と高みに置いた作り手の本音なのか、と勘繰れば勘繰れるのである。
  進藤は自分で垂れた教訓通りに、本番の終りに嘘をついたのだ。
 20日の第2回は「オンライン賭博の闇 八百長スポーツを潰せ~女子アナの密会!」。
 これまた、現実に起こっていそうなバレエ球技の勝ち点を予測しての話である。
 職業バレエの試合中に、日本では法律違反になる勝ち点の賭博が行われていて、それを進藤が暴こうとする話である。
 作り手は抜け目がなく、そういえば、ついこの間、オンラインカジノが現実世界でも話題になり、スポーツ界で逮捕者も出た。
 筆者は自慢じゃないが、1種の博才があり、南仏のように賭博場が出来たら、いの1番に駆けつけたい人間であるが、日本ではダメだ。
 高齢になってもう海外旅行も行けないので、つまらんかぎりだ。
 随分前の話だが、南仏の賭博場で、黄色い洋服を着た白髪の女性が、イタリアからわざわざ国境を越えてニースに賭博をしに来ていたことを思い出す。羨ましい。(2025.4.20)。
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