筆者は長嶋さんと同じ時代に生きていたのに、プロ野球マニアであるにもかかわらず、生長嶋さんを球場で見たことはない。 何故ならば、ジャイアンツの試合を見に行かなかったからである。 筆者は筋金入りの阪神タイガースフアンであり、パ・リーグでは西武ライオンズびいきであった。昔の西武ドーム、今はベルーナドームと言うが、この球場が出来る前から、親しい友人が西武球場前駅近くに住んでいたので、自然とパ・リーグでは西武フアンになったのである。 西武球場が出来た時、西武線のオーナーさんが、「車で来ないで電車で来て欲しい」的なことを発言し、ろくな駐車場を造らなかったので、農家の庭先に2,000円とか払って車を止めていた。 その度に向かっ腹が立ち、「西武のオーナーさんてバカね。どなたでもジャンジャンお車で来てください。デートがてら。格安の駐車場をこしらえますから」とでも仰れば、アベックの若者は車で来るし、歩きの中高年たちも、物見遊山で大勢が電車に乗ってきたはずだ。 今年はどの球場もフアンで賑わっているが、「車で来るな」発言も1つのマイナス要素になって、長い間、西武球場はガラガラだったのである。ケチな西武! 筆者は当時、連載していた週刊誌のコラムに、この批判を書いたら、当の西武関係のオーナーさんが、読んでくださったと聞こえてきたのであった。今は昔の話である。 さて、1998年(平成10年)の長野オリンピックの時、筆者は開会式の取材のために記者席に座っていた。吹き曝しで寒くて寒くて、体調が最悪だった。 それもそのはずで、実はインフルエンザに感染していて、仕事が終わるや否や、高熱を発していることがわかり、長野日赤病院に担ぎ込まれたのであった。 ガタガタ震えながら、曙さんの土俵入りや、小澤征爾さんが指揮するベートーヴェンの第9交響曲のスクリーンを眺めていたのだが、余りに寒いので、お手洗いに立った。 記者席から割と近かったお手洗いに入ろうとした時である。 「あれっ、あの方、見覚えがある」 とトイレの入り口ですれ違った女性が、当時、テレビによく出ていらした長嶋茂雄さんの次女の三奈さんだったのである。 彼女はうっすらとほほ笑んでいらした。 素敵な女性だった。 今回のご葬儀で、三奈さんは喪主を努められたと報道されている。 超有名人であるお父様のご葬儀で、彼女のご苦労は大変なものであっただろう。 亜希子夫人がマスコミに紹介された時も大いに話題になったものだが、三奈さんもテレビで一時期よくお見掛けしたものであった。 いよいよ長嶋さんのほほえましいエピソードについて語ろう。 わが夫が大新聞の記者だったので、会社にやってくる有名人の事をよく聞かされた。 何度も聞いたのは、三島由紀夫さんが会社によく遊びに来るということだった。 仲良しの記者でもいたのかもしれないが、「今日も三島が社に来てたよ」と夫がいい、例のスタイルだったという。 三島さんは剣道の防具を胴体に着けて、面は右手に抱えて颯爽と入ってきたそうだ。多分どこかの道場にいらっしゃる行きか帰りに新聞社に寄っていらしたのであろう。 こういう調子であるから、記者たちが有名人のエピソードを肴にしていたのだ。 長嶋さんの話はこうである。 恐らく運動部の何方かが喋ったはなしである。 長嶋茂雄さんが学生時代のことで、先生に名前を当てられて、質問された。 「次の文章を過去形にしなさい」と先生が長嶋さんを指したのである。 その文章とは・・・。 “ He lives in Tokyo” 長嶋さんは元気よく答えた。 “He lives in Edo” たちまち大爆笑になったそうである。 細部のどこかが違っているかもしれないが、大筋では間違っていない。 テンスの過去形の質問に対して、江戸時代を持ってくるところなんか、トンチ合戦だったら誰も思いつかないユニークさであったが、如何せん真面目な授業だったので笑い話になってしまったのだそうだ。 物凄い身体能力の長嶋さんが、英語の授業で当てられている姿を想像するだけでニコニコしてしまう。彼にまつわること でもう1つ。セコムというセキュリティの会社のCMにでていらしたのに、泥棒に入られたことがあった。 あの事件でも、言っちゃ悪いが「彼らしい話だなあ」とわが家で話題になった。 何となく長嶋さんにまつわるエピソードは、可愛らしいのであった。 さて、終りに。 プロ野球セ・パ交流戦で、わが阪神タイガースは10日現在、快調に走っている。貯金14。 パ・リーグ第2位のオリックスを3タテした。 しかも、佐藤輝明くんが満塁ホームランだ。(8日)。 3番の森下翔太くんも3ランホームラン! 去年は肝心の「ここで打ってほしい」という場面で打てなかった。 今年は、クリーンアップが打ちまくる。気持ちがいい。 しかし、である。これから、暑くなったり、選手に故障者が出たり、何が起きるかわからない。巨人の岡本さんや、阪神の石井さんなど、既に怪我人が出ている。 これ以上、何ごともなく順調に行くように祈っている(2025.6.10)。 (無断転載禁止)