昔風に言えば『マイコン』、毎日新聞社が主催していたクラシック音楽の最高峰のコンクールである『日本音楽コンクール』は、昨年、後半に行われた。
あまた参加者がいる中で、各部門の1位に選ばれた人たち、つまり、コンクール勝者を集めて毎日新聞社とNHKが、披露演奏会を開いたわけである。
作曲部門、フルート部門、オーボエ部門、声楽部門、バイオリン部門とピアノ部門の6
人である。
〇広島大学大学院に在籍中の徳田旭昭さん(1999年生まれ)の作曲部門受賞作は『Baroque Grid IV』。8人の奏者により演奏された。
彼はホールのステージに向かって左側の2階席にたった1人で座って大拍手。演奏した和田一樹指揮の東京フィルハーモニー交響楽団と上下でエールの交換だった。
過去に様々な作曲コンクールで、優秀な成績を収めている岡山県出身者である。
曲の批評はパスさせていただく。筆者にはよくわからないのである。笑。
〇フルート部門の福田京さん(2002年生まれ)は愛知県立芸術大学大学院博士課程在学中で、背の高い優しそうな青年である。
『カール・ライネッケ・フルート協奏曲ニ短調 作品283 第1、3楽章』という優雅な曲を吹いた。筆者の席はM列だったから、そんなに後ろの方ではなかったのだが、音が全体にか細くて細部がよく聞こえなかった。楽器の性格とはいえ、残念である。
彼も数々のコンクールで入賞している愛知県出身者、12歳から吹奏楽でフルートを始めたのだそうだ。きっとご両親の期待の星だね。
〇オーボエ部門の山田涼子さん(1996年生まれ)は茨城県出身の藝大フィルハーモニー管弦楽団オーボエ奏者。つまり、プロ中のプロである。
プロでも応募できるのかい? このコンクールは?
演奏したのは『ユージン・グーセンス オーボエ協奏曲 作品45』で、筆者は初めて聴いた曲だが、超有名な名曲らしい。1927年頃の作曲だから現代曲なのに非常にメロディアスで聴き心地がいい。
ズドーンとした色白のふくよかな身体で、ビロードのような音を出すオバサマ。ごめん。
30歳なので中年ぽい女性だったが、藝大首席卒業だけあって、素晴らしく上手かった。
〇次は声楽部門である。ソプラノの砂田愛梨さん(1990年生まれ)は既に文化庁新進芸術家海外研修員である。東京音大大学院修了。
『ドニゼッティ【ランメルモーレのルチア】から(あたりは沈黙にとざされ)』を歌った。
イタリアでも日本でも、既にメジャーなオペラの主役級で活躍している方なのに、筆者は「なんで今更コンクールなんか受けるの?」と疑問だった。
それほどの肩書なのかね、このコンクールは、と疑問が湧く。
堂々たる声量で華やかなプリマドンナだった。
〇バイオリン部門は最年少の中谷哲太朗くん(2009年生まれ)のまだ17歳である。
もう文句なしのバイオリニストらしい。
東京藝術大学附属音楽高等学校2年に在籍中である。わが可愛い孫ちゃんと同年!
経歴を見ると、尊敬する友人、大谷康子さんにも師事したことがあるらしい。
神奈川県の出身で、有名財団法人から18世紀に作られたバイオリンの名器を貸与されている。期待の星なのだ。
演奏曲は『メンコン』、つまり『メンデルスゾーンのバイオリン協奏曲 ホ短調 作品64
第1楽章』とドメジャーである。この超有名曲を観客はみんなが好きらしくて、筆者の周りに座っている音楽好きたちが、座り直したのがものすごくおかしかった。笑。
〇さてさて、トリに控えるのはピアノ部門である。
加藤皓介さん(2006年生まれ)はまだお誕生日が来ていないから19歳か?
桐朋学園大学音楽学部1年に、特待生として在学中である。うわあ、すごい。
経歴を見ると、うんと小さい小学生の時からピアノのコンクールに出まくって、勝ちまくった人。ご両親がさぞかし、物凄い音楽教育ママだったのか、と思いたくなる。
聴く専門の音楽好きの筆者など、ピティナ・コンペティションと聞いただけでアレルギーだったから、別世界のこの青年のこれまでの人生に同情してしまうのだ。
弾いた曲は『リスト作曲、ピアノ協奏曲 第1番 変ホ長調 S124 R455』という有名曲だが、この曲はコンクールには向かない。
ショパンとかシューマンとかラフマニノフとか、長くて楽章がはっきり分かれていて聴き映えのする曲ならともかく、リストのPCは、全体に短く楽章も明確に分かれていない。
技巧的にはリストだからすさまじいが、コンクールで選ぶのはソンな曲だと筆者は思っている。ところが、加藤さんは、リストで優勝したのだ。凄い坊やだ。
ただし、ちょっとだけ辛いことを言わせてもらえば、多分加藤くんは、この曲を何万回もお稽古したのに違いない。
筆者も会場の観客も拍手喝采ではあったが、筆者は少し感じ方が違った。
「ねえ、君がピアノ達人なのはよく分かったし、初々しさも少しは感じられたけれど、ハタチになるかならないうちから、【馴れた音楽】だけはやらないでね。小柄な可愛い青年なのだから、その姿のままの音楽を聴かせてね」と言いたかった。
とにかく、筆者は音楽コンクールに対して賛否両方の考えを持っているが、今回の授賞者発表会には聴きに行ってよかったと思ったのである(2026.3.10)。
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