テロリズム厳戒の、アリ1匹通さぬ警備の様子が、テレビに映し出されている。
もう、来週に迫ったパリ・オリンピックのスポーツと芸術の大会は、7月26日から開催される。
この、7月26日は、筆者にとって不思議な因縁のある日にちである。
日本では、某音楽評論家の悪口のせいで賛否両論であった、世界的大ピアニストのアレクシス・ワイセンベルクさんの誕生日である。
生きていらしたら、今年は95回目のバースディである。82歳で亡くなった。
彼はパーキンソン病でお亡くなりになった。
筆者は彼が来日される度にコンサートや会合に出席した。
彼の美音に陶酔したフアンであった。成田空港にもよくお出迎えやお見送りに行った。
パリの左岸に居を構えた大ピアニストであったが、世界中を飛び回っていた大演奏家であったので、彼の音楽には底知れぬ現代人の孤独が漂っていた。
独特のワイセンベルクさんの美しい音を、バカな音楽評論家どもが、「冷たい」だの「技巧だけ」だのと貶しても、筆者にはもっと深いところに漂う知性と哀しみが聴こえた。
パリと聞くとイコール、このピアニストを思い出す。
さて、パリ・オリンピックの開会式はスタジアムではなく、セーヌ川を選手たちや300人もの文化人を乗せて船の川下り開会式になると聞く。流石にお洒落なパリジャンが考えそうなことである。
さぞや素晴らしい開会式であろう。『パリは燃える』だろう。
だが。テロが怖い。
長いセーヌ川の両脇全部を当局がカバーできるのだろうか。
何事も起きないことを願う。
1990年代の初めごろに、筆者は初めて大学時代からの友人と一緒にパリに行った。
左岸のオテル・ド・イルトン(要するにヒルトンホテルね、笑)のすぐ傍にあるフラントゥール・シュフランというホテルに泊まった。
女の子2人の珍道中で、「パリは怖いところ」と聞かされていたので、何処に行くのも一緒、とにかくバトームーシュ(セーヌ川の乗り合い船)で川下りをした。
今回の開会式の船と同じ2階建てである。フランス語と英語と、何故か日本語の3か国語で説明があったが、その如何にも外国生活に疲れたような日本女性のアナウンスがパッとしなかった。
バトームーシュは美しい橋、橋をくぐってゆく。
キンキラキンのアレキサンダー三世橋が1番有名であるが、筆者は、ポンヌフに情緒を感じる。
1960年代、八重洲のブリジストン美術館で、このポンヌフを沢山描いた展覧会があり、筆者は同じフランス文学科の男友達に誘われて見に行った。『マルケ展』。
「雨のポンヌフ」とか「霧のポンヌフ」とか、ディテールは忘れてしまったが、やたらと画家たちの創作意欲を掻き立てる橋なのだなあと刷り込まれた。今はどんなだろう。
タイトルにある『パリは燃えているか?』は、言わずもがなの名著、『パリは燃えているか?』(D・ラピエール & L・コリンズ共著)のことである。
1977年に初版が早川書房から出て、訳者は志摩隆さんである。上下2巻。
このドキュメンタリーを原作として、有名なルネ・クレマン監督の長尺映画、『パリは燃えているか?』が作られたのは有名である。アカデミー作品賞も取った。
この本についてはパスするが、最初に読んだ時以来、連合国側の将軍たちより、なぜか筆者はパリの占領軍であるドイツ軍の軍事総督、ディートリッヒ・フォン・コルティッツ大将が面白かった。
彼はチュールリー公園のオテル・ムーリスに陣取って指揮するのだが、外を眺めて、フランスの美少女が自転車に乗って走る姿に目を細めるシーンがあったと記憶する。
記憶違いだったらごめんなさい。
彼は「パリを破壊しろ」と絶叫するヒトラーの命令を無視してパリを救った、ということになっているが、果たして史実かどうか。
筆者は何度かパリへ行く度に、ブリストルやプラザアテネや、オテル・ド・クリヨンなど、1流ホテルに宿泊したが、ムーリスだけは何故か泊まれなかった。
余りにも歴史の中心ホテルなので、保護されているのかもしれない。
『パリは燃えているか?』のドキュメントの中で、ハイライトは当然、解放軍の連合国兵士たちがパリに向かって進軍するシーンであるが、筆者はリュクサンブール公園の真ん前にある本屋で、ある白黒写真をみつけたのだった。
それは、まるでルネ・クレマンの映画とそっくり、進軍する連合国軍のジープ(?)に引き上げられた若い女性たち。リアルの実写である。
みんなニコニコ笑っていて、兵士たちと抱き合ったりキスしたり。
パリへの行進が如何に世界中の喜びであったかがわかる。
何十年も前の歴史上の出来事、第2次世界大戦中の場面が、ヨーロッパの人々にとっては、ホンの昨日の出来事のように、未だに鮮明なのだと感じ入ったのである。
1枚買ってきた。
さてと。1週間もしないうちにパリ・オリンピックが始まる。
ワクワクするが、余りにも毎日の酷暑が厳しいので、オリンピック開会中に、テレビ漬けになって体が参らないか心配である。
報道によれば、選手村には床冷却だけでエアコンはついていないので、選手たちがそれぞれに付けるそうである。大変だ。
26日が待ち遠しい。日本選手たち、頑張ってメダルラッシュを期待する。兎に角、無観客の東京オリンピックがつまらなかったのでね。(2024.7.20)。
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