「流石はオペラとファッションの国、目にも耳にも絢爛豪華な美が届いた第25回冬季オリンピック。イタリアはミラノ・コルティナ五輪の開会式は眠かった」

 前日の夜、12時30分過ぎまで仕事をしていて、寝たと思ったら7日の午前4時に目覚まし時計、もとい、目覚ましスマホ時計の騒音で起こされた。
3時間ちょっとしか寝られなかったので、ヨレヨレ。
 ミラノ・コルティナ・オリンピック 2026大会の開会式である。
 何が珍しいといって、イタリアの4都市も、で、同時に開催される開会式など、びつくりだ。
 若い人たちは生まれていないだろうが、「コルティナ」と聞くと、筆者は1956年の「コルティナダンペッツオ大会」を思い出す。
 何故ならば、日本人の有名な猪谷千春さんが出場したこともあるが、ハンサムなトニー・ザイラーさんが金メダル複数をとり、後に『白銀は招くよ』ほかの主演映画が大ヒットしたのである。主題曲もヒットした。
 冬季オリンピックといえば、1998年の長野オリンピックについては、開会式の取材に行って、インフルエンザに罹り、長野日赤病院に担ぎ込まれた話は、既に書いた。
 それより、1972年の札幌大会では、子供がまだ2歳だったので、どこにも行けず、テレビ観戦だった。今でも忘れられないのは、可愛いアメリカのフィギュアスケート選手、ジャネット・リンちゃんが、失敗してコロンとひっくり返り、パンツ丸出しになったが、にっこり笑って拍手喝采だった!
 結局、彼女は3位になったと記憶する。今でもご健在であるらしい。
 さて、今回の開会式を一言で表現すれば、音楽と美術が凄かったことだ。
 但し、4会場を交代で映すので、見ている方はこんがらかり、印象が散漫になって勿体なかったことは残念である。
 筆者が最も感心したのはテノール歌手が、プッチーニ作曲の『トゥーランドット』から、超有名な『誰も寝てはならぬ』のアリアを朗々と歌った場面で、繰り返しも含めて、完全に聴かせてくれたことである。
 フィギュアスケートなどに伴奏として使われるのは、作曲家に申し訳ないほどカットされまくっているので、常に聴く方は欲求不満なのである。
 プッチーニさんが出たところで、大ヒットのアイデアはイタオペの3大作曲家、ロッシーニ・ヴェルディ・プッチーニたちのデカ面のハリボテが傑作だった。
 ロッシーニは言わずもがなの美食家で、デカ面のちょび髭。『セビリアの理髪師』。
 ヴェルディは頬っぺたまで髭面の奥眼。『椿姫』『アイーダ』『リゴレット』。
 プッチーニは美男子のちょび髭。『蝶々夫人』『トスカ』『ラ・ボエーム』。
 この3人のデカ面ハリボテ男たちが、過分数の身体でダンスをしたのだ。
 噴き出すほどユーモラスな場面なのに、日本のテレビのように下品ではなく、素晴らしくおかしいけど品がいいのである。
歌では、世界的な歌手のマライア・キャリーさんが、名曲の『Nel Blu dipinto di Blu』をイタリア語で歌って大受け。驚いたのはイタリアにあんまりご縁があるとも思えない、中国人のランラン君がピアノ伴奏で出たことだ。売り込み成功だね。
美術装置で筆者が驚いたのは、空中にイタリア国旗の色とおんなじの、巨大な絵の具のチューブがぶら下がり、それらの口元から、絵の具のような液体がだらりと下に落ちてきた。
まさか映像だとは思えないが、床まで垂れて、ふっと消えた。
どうやってるの?
同じように、夜空の空中に出てきた巨大な輪っかが、次第に移動してくっつき、最後に見事な五輪に収斂した仕掛けもあざやかで、どうなっているのだろうと考えこまされたのである。
選手団の入場はパスする。何故なら、同じ国でも会場が4つもあるので、見ている方はよくわからん。旗手がいないところは、ははあ、ミラノじゃないな、とわかるぐらいでめんどくさかった。
それより、旗手の前を先導する銀色のメタリックな衣裳にサングラス姿の、各国国名プレートをもった女性たちが、能面みたいでおかしかった。
思い返せば、1964年の夏の東京オリンピックで、日本選手団の一糸乱れぬ行進姿は、まるで軍隊のようだったが、今回の選手たちは三々五々、楽しそうに好き勝手に歩いている。
つくづく、若者たちの祭典らしくていい。
メイン会場で、アルファベット順に入場する選手団の国名について、驚いたことがある。
わが国は『JAPAN』でも『JAPON』でもないのだ、イタリアでは。
わが日本国の表記は『GIAPPONE』だって。
つまり、『J』ではなくて『G』だから、34番目の行進だったのである。へーえ。
いっそのこと、全世界にアナウンスして、これからは『NIPPON』でいきますとしたらどうかね。
いやあ、右翼の高市さんが大勝したら、国名まで右翼にするのかと言われそうだ(笑)。
最後に感心したのは聖火のユニークさである。
2会場で灯された聖火のデザインが、これまた手が込んでいた。
矢でぶっ放して点火する五輪や、ヘリコプターで降りてきたり、だんだん凝った仕様になってきているが、ミラノの聖火は円形の複雑な幾何学的模様だった。
中心にはメラメラと炎が燃えていて、それを囲む金属のデザインが、ルネサンスの先人のもの?
ここは聞きそびれた。
筆者はNHK総合テレビを見ていたのだが、今回の放送アナたちは、煩くなくてよかった。
昔々、草野満代さんが煩いお喋りで、筆者は週刊誌のコラムで「黙れっ」と書いた記憶がある。さて、選手諸君、頑張ってくださいね。健闘を祈る(2026.2.10)。
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