「ごたごた続きの 東京オリンピック2020 開会式を目撃する」

  真昼間にテレビを見ていたら、TBSの『ひるおび!』でブルーインパルスの飛来を中継し始めた。5機の前に先導機が1機、計6機の美しい編隊である。0時40分過ぎだ。
  6機の上から写しているヘリコプターカメラの技術も凄いが、下から編隊を撮っているカメラの技術も優秀である。あのスピードについてゆくのはカメラも大変だ。
  途中から色付きの煙をお尻から吐く。物知りコメンテーターが、「昔の煙は下に公害を撒いたが、今回の煙は研究されて無公害である」と宣う。なるほどと感心する。
  しかし、雲のためにワッカの五輪は1部しか見えなかった。
  自慢じゃないが・・・。
  1964年、今から57年前の東京オリンピックで、私は生で、東京の空の五輪マークをこの目で見たのだ。歳がバレるがそんなことはいい・・・。
  当時、四谷の若葉町に住んでいた。
  サーバーの不具合で消えてしまった以前の公式サイトには書いたのだが、1964年10月10日、東京オリンピック開会式をテレビで見ていた。ほんの近くに住んでいたのに、旧国立競技場には接近すらできなかったので、テレビ観戦していたのだ。
  貴賓席にカメラが向いていて、丁度、昭和天皇と香淳皇后のお姿を映していた。すると、空を見上げた皇后様が、お隣の天皇をちょっとつついた。
  真っ青に晴れた秋の上空に、ブルーインパルスが描いた五色のオリンピックマークの煙の輪が、見事に咲いていたのである。
  昭和天皇様もご覧になった。
  「あっ」と言って私はテレビから離れ、急いで中庭に面した窓を開けて空を見た。
  旧国立競技場と四谷の若葉町はほんの至近距離である。
  天空にそれはそれは鮮やかな五輪の煙マークがはっきりと見えた。
  今年の五輪マークは残念ながら雲に邪魔されて、あまり美しくは見えなかったが、それ以前の6機の編隊は見事だった。
  開始直前のスタッフから、複数の人たちが解任されたり、辞任したり、全くもってごたごた続きの「東京オリンピック2020」であるが、まず、見てからものを言おうと午後8時にテレビ桟敷に座った。
  仲のいい友人に、「見ましょうね」と約束したので、夕食も済ませて座ったが、このところ微熱が続いているので、シャワーは浴びずに後回し。クーラーの中にい過ぎて寒かった。
  
 12時近くまで「完視聴」した私の結論は、次の通り。
  
 ①  音楽が貧しかった。アニメの音楽がメインとは情けない。しかも、版権の切れたラヴェルの『ボレロ』だのビートルズだの、東京大会なのに国籍不明の使い方で、日本人作曲家の名曲が沢山あるのに、なんだこりゃ、である。
 直前に音楽家がいなくなった事情を考慮しても、第2、第3のプログラムは用意しておくべきだった。日本には錚々たるクラシックの作曲家が沢山いるのに残念だ。
  
 ②  前半のアトラクションのうち、江戸前の木遣りや火消しのパフォーマンスは、質素で淋しかったが、上品で本物のよさがあった。大工の棟梁に扮した真矢ミキさんも、さすがに元宝塚の男役、いなせで良かった。だが、フロアーの巨大さの割に人数が少なくて、もう少し人数を動員した方がよかったと思う。
 北京大会の大人数の人海戦術には辟易したけれども、ちょっと和風は寂しかった。
 火消しついでにハシゴ・パフォーマンスでもやればよかったのにね。
  
 ③  コーナー別で感心したのは、絵文字のコーナーのパフォーマンスである。青と白の匿名の人間が、それぞれ絵文字の格好をする。1度失敗したのもご愛敬だった。それにしても50パターンもあるとは知らなかった。あの2人のパフォーマー、よくも50例も間違わずに覚えていたと感心する。ご苦労様。
  
 ④  もう1シーン感心したのは、ドローンによる空中の地球儀だった。東京2020のエンブレムがいつの間にか世界地球儀になり、銀色で統一されていた色彩感覚もシック。
 ドローンをあれだけピッタリ合わせるのは、いくらPC制御でも大変だっただろう。
  
 ⑤  選手入場ではカメラワークがちぐはぐ。国によって国名のパネルが映ったり映らなかったりした。旗手を写すのはいいのだけれど、その前に国名を書いたパネルをバッチリと撮ってもらいたかった。お陰で、途中で眠気が出た。
  
 ⑥  最終の点火ランナーについては、私の予想が大当たりした。何故ならば、有明の練習場に来ていた大坂なおみさんのニュースがよく報道されていて、「はて、彼女がこんなに早く日本に来るのは、変だぞ」と思ったからである。半分日本人なのだから日本にいるのも当然だが、彼女に関しては、私は何故かあまり早く会場には行かない人という印象があったのである。
  1964年の東京オリンピックで、広島原爆投下の日に生まれた坂井義則さんが選ばれたことを、当時の外電は「あてつけがましい」と批判したと記憶している。だから、今回は政治的社会的人選を忌避したのだろう。ジェンダーからも実力からも、インタビュー拒否の話題性からも、正になおみちゃんは適任だったと言える。
  さて、識者たちの「オリンピック反対」コールやら、コロナの蔓延やら、これから2週
  間以上、ハラハラするだろうが、何事もなく終わってほしい。
  私はひたすら競技を見物する。(2021.7.23.)

                                             (無断転載禁止)