「投高打低とは何ぞや。大越健介さん(報道ステーション)が何となく嬉しそうだった」

 5月19日の『報道ステーション』(テレビ朝日)の中の、スポーツコーナーで、「近頃のプロ野球は投手力の方が優っていて、打力の方が低い」という話をした。
 その根拠は、ロッテの佐々木朗希投手が2022年4月10日、ZOZOマリンスタジアムで、パ・リーグの公式戦・千葉ロッテマリーンズ対オリックス・バファローズ3回戦で完全試合を達成したこと。
 もう1人、延長戦になって惜しくも完全試合とはならなかったが、9回まで1人のランナーも出さなかった5月6日の阪神タイガース戦で、「9回まで完全試合を達成した」中日ドラゴンズの大野雄大投手など。相手が阪神なのでムカつくが(笑)。
 素晴らしい投手が次々に出ているので、「今は、投高打低だ」というのである。
 その根拠に番組が挙げたのは、次のような数字である。
 まず第1に、投手の球速が時速にして6km速くなっているのだそうだ。
 投手の防御率もセ・リーグでは、
 2018年・・・4.10
  2019年・・・3.89
  2020年・・・3.83
  2021年・・・3.60
  2022年・・・3.33
 パ・リーグでは、
 2018年・・・3.90
  2019年・・・3.91
  2020年・・・3.86
  2021年・・・3.48
  2022年・・・2.89
と明らかに数字が減少している。なるほど、こんなに顕著だとは思わなかった。投手の防御率とはつまり、少ないほど打たれていないということである。
一方、野手などの打率であるが、まず、セ・リーグでは、
.259・・・.253・・・.254・・・.251・・・.243
パ・リーグで
.254・・・.252・・・.246・・・.241・・・.231
 と、確かに減っている。
 インタビューを受けたソフトバンクの千賀滉大投手は言う。「10年、20年後は、160km/h投手が、どのチームにも何人かいる。150km/hの変化球を投げる人も」。
 つまり、今、大リーグの大谷翔平くんの球が、164km/hだとか言って、画面に数字を書いてワーワー言っているが、そんなのは当たり前になるだろうということだ。
 私は「神様、仏様、稲尾様」の頃からプロ野球フアンをやっているからよくわかるのだが、第1に、今の青年たちは確実に体格がよくなっている。栄養がいいし筋肉のトレーニングも合理的に考えられて実行されているに違いない。身長もでかい。
 大谷くんや、私が大好きなダルビッシュ有くんなどは、190センチ越えの大男である。佐々木朗希くんも190センチらしい。大リーガーの中で、日本人投手が頭1つ抜きんでているなんて夢のような時代になった。
 彼らの横に並ぶと、私は多分、彼らのウエストベルトのあたりに首が来るだろう。トホホ。
 それと、確実に投手はオーバーワークにならないように守られている。
 昔々は「100球縛りなどなかった」。1人のピッチャーが試合終了まで投げ続けるのは当たり前だった。それどころか、日本シリーズで、3連投などよくあったものだ。
 日本シリーズで、西鉄ライオンズの稲尾投手が、読売ジャイアンツとの、例の3連敗後の4連勝で、7試合中、6試合に投げ、その内、4試合は完投というめちゃくちゃな酷使をされても問題にはならなかったのである。
 今だったら訴えられるだろう。稲尾さんは「投げられるだけ嬉しかった」と言う様なことを言っている。まさに、鉄人稲尾!
 この試合について私が身内から聞いた話がある。当時、私の長兄が船舶検査官だったので、日本中のあちこちに転勤していた。北九州にも赴任したことがあって、そこで、このシリーズについて聞いたのである。
 平和台球場で読売ジャイアンツに3連敗した夜、監督の三原修さんは、練習しろなんて言わなかった。みんなに「飲みに行こう」と誘って、夜の町に繰り出し、そこでどんちゃん騒ぎをしたのだそうだ。
 その後から西鉄ライオンズは4連勝したのであった。
 稲尾さんも投げ続けた!
 今だと完全なパワハラだわね。でも野武士集団の魅力は凄かった。
 さて、今の投手陣は100球しばりで、間隔も6日後とかに開けられている。
 連投など絶対にないから、投手たちは疲れがたまらないのだろう。
 ところが、打線の方は個人個人のセンス、視力、パワーなど、従来通りの肉体的努力で良くも悪くもなるので、時代が代わろうと余り数字が飛躍的に伸びないのではないか。しかも、投手が研究してオハコにする球種は増えているので、打つのも大変だ。
 ファンとしては、シーンとしている投手戦なんかよりも、豪快にホームランが出たり、負けていたチームが、9回の裏で、逆転満塁ホームランで勝ったりする方が面白いのだが。
 この夜、元東大野球部選手だった大越さんの目はキラキラ輝き、実に楽しそうであった。解説の川上憲伸さんは例によって四国訛りの生真面目な話し方で、小木キャスターは数字の説明。このトリオ、中々よかった。
 それにしてもわが阪神タイガースは、さっぱり上がってこない。西純也みたいな孝行息子も出てきたのだから、もっと気張れ!(2022.5.20.)
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