「甘利さんが幹事長になられた時に、私はえーっと思った」

  10月24日(日)の午前10時ごろ、私は家から近くの〇〇センターに出かけた。
  31日の衆議院議員総選挙の投票日に都合が悪いので、期前投票をするためである。
  以前、期前投票をした時には、歩いては行けない距離の区役所までいった記憶があるが、近くの〇〇センターで投票が出来るようになってからは、わざわざ車で区役所に出かけなくていいので都合がいい。
  前に来た時には投票者は誰もいなくて、選挙管理人たちが何人も並んで座り、じーっとみていたので居心地が悪かった。今回は期前投票の初日であるにもかかわらず、年配の男性、中年女性が2人、と私を含めて4人も来ていた。
  入口に立っている男性が、私の差し出した投票券を手にして、こんなことを言う。
 「これは貴女のですか?」
 「だから、持って来たんじゃないの」
  私はムッとした。まるで人の物を盗んで持ってきたのかと言わんばかりだ。バカな選挙管理人だ! 多分、私は生年月日相応の高齢者には見えないらしいので、娘が代理で来たとでも思ったのか。娘はいないけど。
  わざわざ期前投票をするために日曜日の朝っぱらから出かけてきた人に対して失礼だろう。選挙管理人たちのレベルが知れる。おい! こんなバカ質問はさせるな!
  小選挙区の候補者名を書き、最高裁判所判事の審査投票と比例区の党名を書き、総てを済ませて2階からエレベーターで降りてきた。
  1階の役所は日曜日なのでシャッターが下りていて休みである。
  玄関から出て帰ろうとした時である。
  150センチ少々の私から見れば、雲つくように大きな男性が、腰をかがめて私にチラシを差し出した。
  思わず受け取った時だ。男性から10メートルほど後ろから付いてきていたミニワゴンの中からスピーカーの声がした。
  「只今、候補者・〇〇〇〇本人が車の前を歩いております。〇〇〇〇をどうかよろしくお願い申し上げます」
  「えっ?」と私は渡されたチラシを見て、その、雲つくような大男を見上げた。
  まぎれもなくこの区域の衆議院議員候補者本人であった。
  「あれっ、〇〇さん? 今、私、上で貴方に投票してきたばかりよ」
  私もびっくりしたが、当の候補者本人もびっくりしたみたい。目の前のオバサンが「投票してきたばかりよ」なんて言うものだから、目をまん丸くしている(笑)。
  面食いの私は「おお、中々のイケメンだ」と思った。
  候補者本人に最敬礼されたのである。こんな偶然はめったにないだろう。
  期前投票バンザイ。
  ところが、31日の投票日の夜である。午後8時前からの開票速報を、NHKとテレビ朝日と日本テレビの3局、秋葉原スタイルで3台のテレビを並べてモニターしていたら、私が投票した〇〇〇〇さんは、この区域の出口調査で断トツの1位になっている。
  よかった。よかった。「あの大男くんは当選するな」と安心して寝た。
  しかし、現実はそう甘くなかったのである。
  〇〇〇〇さんは結局小選挙区では次点だった。だが、比例区で当選した。ホッとした。
  出口調査では2位の人より相当数多かったように見えたが、現実では逆転された。出口調査した場所に偏りがあったのかもしれない。
  さて、私の判断では、今回の総選挙では与党側も野党側もどちらも勝利者と言えないと思う。日本維新の会が4倍増したが、東京人の私から見れば、「維新? 何それ」ってなもので、まだ、中央の大政党という感覚はしない(失礼)。まあ、頑張ってください。
  それより、自民党幹事長の甘利明さんが小選挙区で落選して、事もあろうに野党の新人にまけたことが大きい。
  そもそも、岸田文雄さんが総理大臣になって、党の人事を発表した時に、「幹事長は甘利さん」と言うのをテレビで見て、私はひっくり返った。
  何故ならば、2016年の甘利さんの疑惑報道を忘れていなかったからである。
  週刊文春が甘利明さんの「金銭授受疑惑」を報道し、内閣府特命担当大臣だった甘利さんが、疑惑を否定しながらも大臣を辞任した事件を、私はありありと覚えていた。
  それどころか、ドングリ型の甘利さんの顔を思い出すたびに(?)が浮かんだ。
  岸田さんはずいぶん甘いお方である。
  なんで、肝心要の要職に「たった5年前に疑惑を報じられて、大臣をやめた人」をつかせるのか。選挙民も随分舐められたものであると思った。
  神奈川13区の選挙民の方々の中にも、私のように5年前のことが刷り込まれている人がいたと見える。これでこそ民主主義である。
  従って、いくら比例区で当選しても、辞任は当然。
  自民党幹事長に選んだ岸田文雄さんがどうかしているのだ。
  人は良さそうだけれど、岸田さんははっきり言って総理の器じゃないわね。
  さて、私は長く物書きをやっているが、政治的な発言は極力しない。何故ならば、すぐこの国のメディアは右だ左だと色分けするから嫌なのだ。
  私は個々別々の問題について、常に自分で考えるから、右翼でも左翼でもない麻生党である。だから、どの党の誰に投票したかも言わない。
  小選挙区では次点だったが、比例区で「雲つくような大男くん」が目出度く衆議院議員に当選してくれたから満足である。
  甘利さんの後釜の外務大臣だった人も、なんか冴えないね。
  もっと清新な若手の切れ者が出てこないものか。
  全体に代議士さんたちの質が劣化していると思うのは私だけだろうか。(2021.11.1)
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