「だから言わないことじゃない」

 6月3・10日号の週刊現代にショックな記事が出ている。
 『元強盗犯が衝撃告白 「マイナ保険証を持つ奴はカモだ!」』というタイトルである。
 「政府がゴリ押しするマイナンバーカード。そのトラブル報告が止まらない。5月23日、河野太郎デジタル大臣は全国6つの自治体で、公金受取口座が別人のマイナンバーと紐づけられていたケースが11件も確認されたことを発表した。
 マイナンバーカードと健康保険証との一体化、いわゆるマイナ保険証の普及も急ピッチで進められているが、こちらも別人の情報と紐づけられていたケースが約7300件も明らかになり、厚労省が全国の健保組合に点検作業を行うよう要請するなど、驚くようなミスが多発している。」
 「そんな機能不全を『格好のビジネスチャンス』ととらえているのが、闇社会の住人たちだ。・・・中略・・・元強盗団のA氏。新たな『シノギの手段』を日々探す彼らはいま、マイナ保険証に狙いを定めている。
 政府はマイナンバーカードの『絶対安全』を謳っているが、認識が甘すぎ。保険証とカードが一体化することで、今後、介護施設の利用者はマイナンバーカードを施設に預けるでしょ? アレが狙い目。
 最近、食い詰めたヤクザ者が介護業界で働くケースが増えてるんですが、そういう連中に、施設内のマイナンバーカードからデータを抜かせる。暗証番号も一緒に保管しているから、簡単ですよ。
 カードと暗証番号があれば、マイナポータルにアクセスしていろんな情報が見られる。手っ取り早いのは医療情報。たとえば持ち主が糖尿病だったら、その人の情報を、高額な糖尿病薬を販売する会社に売ればいい」
 元手はタダのようなものだから濡れ手で粟だ、とA氏は笑う・・・後略・・・。
 「クレジットカードの機能をマイナンバーカードに付けようという話もあるけど、大歓迎。クレジットカードなら警戒して出さないけど、たとえば警察のふりをして高齢者の家を訪ね、『マイナンバーカードを見せてくれますか?』と言えば、すんなり見せてくれる。そこでカードの番号を控えればいい。スキミングの機械を使えば、偽造カードも作れるかもしれない。
 介護施設に預けてあるマイナンバーカードにもクレジット機能が付いていれば、さっきの職員を通じて情報を盗むか、あるいは時々拝借してクレカとして使っちゃうかもしれない。バレるって?
 これが悲しいことに、高齢者って、多少口座の残高が減っていても、気づかないんだよね。心の中で、おじいちゃん、おばあちゃん、ありがとねと言いながら使わせてもらいますよ(笑)」
 長い引用で申し訳ないが、正にわが意を得たり、である。
 夕刊紙(日刊ゲンダイ、5月23日)にも「マイナカード別人登録続出、”普及ありき”
河野デジタル相の”罪”、トラブル背景にポイント欲しさの窓口殺到」というデカ記事が出ている。
 テレビのニュースでも、河野大臣がシレ―ッとした顔で、「ミスが多発してもしょうがない」風なコメントをしていたが、推進派には事の本質が余りわかっていない。
 筆者が以前書いたように、日本人全員に番号を振り当て、就中、その番号に「紐づけ」と称する銀行口座番号や、健康保険番号などなど、余り他人に知られたくない個人情報をくっつけて、一元管理しようという下心自体が卑しい。
 上から目線で国民を番号で呼び、キーを「ポン」と押すと、「この爺さんは年寄りのくせに小金を貯めておる」「この婆さんは株屋との取引が多い、見かけによらん財テクばばあだ」などと、素っ裸にして眺めるつもりか。
 若い人にはわからないだろうが、筆者は第2次世界大戦中のことを思い出す。ナチスドイツに収容所送りにされて、ガス室で殺された多くのユダヤ人たちは、人間扱いされなかった。
 何の誰べえという個人の名前は無視されて、番号で呼ばれた。人間の尊厳などなかった。
 人間には名前がちゃんとあるのだ。「ポン」と押して出てくる番号などはいらないのである。まして、今は戦時中ではない。
 強調したいのは、人間はミスを犯すということだ。
 同姓同名で誕生日まで同じだったから、入力ミスを犯した、なんてニュースを聞くと、「何言ってやんでい」と腹が立つ。頭を使わずに機械的にパソコンにやらせているからそんなことになるのだ。只の数字であるから無機質で、担当者はナンバーの向うの人間が見えない。
 省力化ばかり追いかけて、「紐づけ」などという変な言葉で国民を縛る。一種の国民素っ裸作戦である。筆者はごめんである。たかが、20,000ポイントでつられて行列する人たちも情けない。
 来年、健康保険証もなしにする、と脅迫している。
 まだまだPCが普及していなかった時代ではあったが、今でも鮮明に思い出すのは、国民が営々と収めた金をぐじゃぐじゃにした社会保険庁のことである。
 パソコンが普及していなかったからとか言って、日本年金機構と名前を変え、頬かむりしてしまった。わが家は疑り深いので、事務所に行って調べさせたらミスはないと言われた。
 筆者のようにマイナンバーカード反対派は「法律違反」と言って逮捕されるのか?
 面白い。
 話を戻すと、筆者はマイナンバーカードの申請に行かない。木っ端役人に数字で呼ばれるのはごめんである。
 は、は、は。闇社会の方々が、「紐づけ」情報を盗み出して、ボケた高齢者の個人資産を盗み出したら事だぞ。それより筆者が心配なのは、ネットという一網打尽組織を、頭のいいワルが高度に利用して経済を破壊することである。(2023.5.30.)。
                                                     (無断転載禁止)