「トム・クルーズの『ミッション・インポッシブル/デッドレコニング PART ONE 』を見てきた」

 2020年に閉園した豊島園遊園地は、今や『ハリーポッター』で有名になっている。
 今年の6月に『ハリーポッター』シリーズの制作現場を体験できる屋外施設を開業すると会社が発表した頃、西武線の電車がハリーポッターだらけになり、あのナントカ少年の顔のフィルムが電車の表面に貼りまくられた。
 筆者はこの映画には全く関心がなかったので、1度も見たことがない。
 だから、その後の豊島園にも行かないが、すぐ目の前にあるシネマコンプレックス・としまえんには映画を見るためによく足を運ぶのである。
 また、としまえん側の反対の、大江戸線・豊島園駅の正面には、大昔、関東大震災で壊滅した浅草から、集団で移住してきた由緒ある下町のお寺さんたちが作った立派な寺町があり、そこには筆者の身内も祀られている。
 豊島園がとしまえん遊園地だった頃、夏の土日の夜に、花火大会が開かれていて、入場料金を払って入らなくても、門の外側で花火は快適に見ることが出来たので,よく行った。
 殺人的な混雑の隅田川花火大会なんぞに行かなくても、豊島園でのタダ乗り花火で十分楽しかったが、ケチな西武グループは、いつの間にか花火もやめてしまった。
 息子が2歳の頃、後年音楽家になる彼は異常に耳が鋭かったので、豊島園の花火大会でも、打ち上げの音がするたびに、抱っこしている父親にしがみついて怯えて泣いた。
 傍にいっぱいいる他所の子どもたちはケロッとしているのに、息子だけが泣きわめくので、いつの間にか花火見物もやめてしまったのであった。
 「ズドーン」と打ち上げる花火の音は、夏の風物詩であったが、子供が怯えるので、「ああ、そうか、小さい子にはそんなに怖い音に聞こえるのだナ」と初めて教えられた。
 今は昔の思い出である。
 さて、そのシネマコンプレックス・としまえんで、封切り当日の『ミッション・インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』を見てきた。
 ハリウッドの俳優組合はじめ製作者たちが、ストライキに入ったために、いつも宣伝に来日する主演のトム・クルーズさんたちが、来日を取りやめたあの映画である。
 トム・クルーズの親日家ぶりはつとに知られており、いつか、字幕翻訳家の戸田奈津子さんと密着して写真に写っているのを見たことがある。今回の映画も戸田奈津子さんの翻訳であった。
 スクリーンによっては丸ごと日本語吹き替えもあるが、筆者は日本語をしゃべるトムさんなんて気持ち悪いので、今回もスクリーン5というIMAXの小屋で見たのである。
 凄い音響でデカスクリーン、終始一貫のアクションアクションで息もつかせなかった。
 まあ、こういう映画の筋書きを辿っても意味ないので、凄かったところをピックアップして語ろう。
 『ミッション・インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』は壮大なスパイアクション物語の前編である。2年後に『PART TWO』の後編が公開されるという。
 監督、脚本、製作はクリストファー・マッカリー。
 最初のステージはアラブ首長国連邦の首都アブダビ。
 ここの空港でのアクションは、プログラムを読むと、物凄いスケールのハブ空港を建設中であったので、2021年の2月に12日間、開港前に借り切って撮影したという。
 イーサン・ハント(トム・クルーズ)がサラブレッドに乗って走る。
 砂漠の砂嵐が凄いのだが、これは巨大なV8ファンという送風機で風を作った。
 アブダビの場面はミッションの重要な女性、イルサ・ファウストが傭兵に追われるシーンを撮影した。
 まあ、これは前菜みたいなもの。
 最初の凄いアクション場面は、何と言ってもイタリアのローマである。
 歴史的な建造物だらけのローマの中心街でのカーアクションだ。
 筆者は「そんな撮影ができるはずがない」と思っていたら、これが実写。フォーリ・インぺリアーリ(遺跡)中心街でのカーアクションで、これは2日間借り切って街を封鎖しで撮影したという。
 可笑しかったのは主人公のイーサン(トム・クルーズ)と、主要な相手役女性グレースが手錠で繋がれたままBMWや、最新の電気高性能モーターを搭載した真っ黄色のフィアット500を運転して街中をぶっ飛ばすところ。トムのよじれた手が笑える。このカーアクション場面は、過去のどんな映画の物より凄い。何しろ両ドアがぶっ壊れてもまだ走る。
 次は水の都ヴェネツィア。筆者は真夏と真冬のカーニバル時に行ったので、懐かしい。
  夜間の撮影で、運河の至る所にかかっている橋の上での決闘である。ここには車が入れないので、すべて人間が走る走る。薄明りの運河が妖艶なステージとなっている。
  紙幅が足りなくなってきた。
  PART ONEの最も凄い最後の場面はアルプス(実際はノルウェイ)の列車のシーン。
  正体不明の悪役のガブリエルほか、全員が揃った列車に追いつけないと悟ったイーサンが、崖の上からバイクのまま飛び降りて、なかんずく、途中でパラシュートを開き、そのままアルプスの山の中を暴走する列車の屋根に飛び降りるのだ!
  ときどきトンネルで首が飛ばされるようなスピードの列車の屋根の上で、決闘する。
  最終的に列車は悪に鉄橋を破壊された谷底に落ちてゆくのだが、その列車内でのイーサンたちと、最後部の客車に逃げてゆく乗客たちの群像演出がものすごい。
  見ていて訳が分からないような目まぐるしいパニックシーンである。
  どうやって撮影したのか、バーチャルではないので、見ている方も頭を使う。
  トム・クルーズさんは少し年を取ったが、このアクション俳優が危険と隣り合わせで自ら演じるイーサンは、後編への大いなる期待を抱かせる。コロナ・パンデミックで数々の撮影困難があったらしいが、観客としては有難かったし面白かった(2023.7.21.)。
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