「産休明けのエース・和久田麻由子が案内する力作、未解決事件『北朝鮮拉致事件1、2』の醍醐味」

 ツンとすましてもいず、目鼻立ちの整った美人で、声も抵抗感のないアルトに近く、しかも、東大卒の知性を持ち、1点も非の打ちどころのないアナウンサーのエース。
 恵まれすぎていて呆れてしまう程の和久田麻由子さんが、鳴り物入りの産休明けである。
 いきなり主要なニュース番組に登場するのかと思ったら、違ってた。
 NHKが局を挙げての肝いり番組、『未解決事件』の案内人である。
 筆者は「なるほど」と唸った。
 別格扱いであるナ。
 確かに重大な国民的関心事でありながら、民放には作れない地味なドキュメントになりそうな社会派の番組は、NHKにしか出来ないと言っても過言ではない。
 ひっくるめて『未解決事件』とした数々のナゾの事件は、われわれ日本人の喉元に突き刺さった小骨のように、不気味な恐ろしさを伴って存在する。
 よくやってくれた、NHKと言いたい。
 過去の放送も総て見ているが、今回は北朝鮮による拉致事件である。
 5人の人たちが小泉純一郎首相時代に帰国してから、早、23年も経つ。
 近頃はとんと進展がない。
 実にわれわれ日本人の沈んだ気持ちを理解しているように、『未解決事件』の新作放送である。待ってました、だ。
 10月18日の土曜日に午後7時30分から、まずドラマ仕立てで放送されたのは、「~外事警察と北朝鮮工作員の攻防!」である。
 『蓮池薫さんが経験した北朝鮮での24年を描くドラマ』である。
 ドラマパートでは、高良健吾さんが外事警察の捜査官を演じ、誘拐される蓮池薫さんを田中俊介さんが演じている。
 他に、外事警察の管理職に沢村一樹さん、北朝鮮の工作員、チェ・スンチョルに大倉孝二さんが扮している。
 1970年代、新潟県の柏崎市の海岸で、蓮池さんは誘拐された。特殊な白い猿轡を口にかまされて、北朝鮮へ工作員によって連れ去られたのである。
 高良健吾さんが演じる喜多見は、外事2課という北朝鮮のスパイ情報を収集する部署の捜査官である。
 この頃、われら日本人は、まさか日本海側の海岸で、非合法に上陸した北朝鮮の工作員が、何の罪もない普通の日本人を拉致して北朝鮮に連れ去るなどというとんでもない犯罪を行なっていたとは、夢にも知らなかった。
 周り中が海に囲まれた日本列島は、よく考えれば、隙だらけである。
 平和ボケして性善説の普通の日本人は、夕暮れ時に日本海側の海岸に、非合法の外国工作船が停泊していて、そこから夜陰に乗じて上陸してきた工作員によって、かどわかされるなどということを、想定出来なかった。
 そんなことをやってしまう朝鮮の人たちは、やっぱり、外国の人である。
 蓮池薫さんは北朝鮮で監視された毎日を送るのであるが、不思議なことに同じ拉致被害者の女性との結婚も認められる。
 驚いたのは、工作員スンチョルが蓮池さんの住んでいる家にやってきて、「結婚おめでとう」と言ったりするのだ。
 筆者が勘繰ったのは、常時監視はされているが、手荒なことをされたのは拉致の時だけで、普段は一戸建て(?)の家に奥さんと住んでいて、拷問などもされていない。
 しかも、蓮池薫さんは帰国できたのだ。ハテ?
 1番の疑問は、蓮池さんがあちらで、何をしていたのか、ということ。
 恐らく、食い扶持を稼ぐために、何らかの仕事はしていたはずだが、そこは全く描かれていない。北朝鮮が彼を帰国させたのは、彼を帰らせれば自国にとって何らかの「トク」があるからだろうが、「子どもを置いて帰る」こと意外に何も語られていないのだ。 
 全く当てはまらない憶測であるが、頭のいい蓮池薫さんを日本に帰すことによって、かの国に利益がもたらされるとすれば、蓮池さんは何らかの密命を帯びて帰国したか、あるいは、かの国での役割を完遂したご褒美で帰されたのか。
 いずれにしても、このドラマでは、肝心のキモの部分はネグられている。
 蓮池さんの命にかかわるので、わざと気が付かない風に描かれなかったのか。
 筆者は眉に唾を付ける。
 ナゾだらけのドラマである。
 午後10時からのドキュメンタリーは、外事警察幹部や外交官らの証言であるが、省略。
 筆者はごく普通の日本人である。
 恐ろしい誘拐や拉致などが、身辺で起こったこともない。
 だが、大韓航空機事件以来、報道される拉致問題には人並みに関心を持っていて、いつも疑問に思っていることがある。
 小泉純一郎さんの時に出来て、その後の総理大臣には何にもできないのは何故なのか。
 何故拉致問題に進展がないのか。
 たった十代の少女だった横田めぐみさんが、60代(!)になってしまったのに、新しい動きがないのはとても不思議である。
 実現するかどうかわからないが、もしも、今回の政局で、女性の総理大臣が生まれたら、是非とも、ただ1人の高齢の母親が待つ日本に、ひとり娘を帰国させて欲しいと、かの国の為政者に頼んで下さい。
 国家権力を握る女性の総理大臣にお願いする。
 『未解決事件』のテーマはまだまだ山ほどある。
 さらなるスクープを期待する(2025.10.20)。
(無断転載禁止)

テレビ 歴史

「期待していた大河ドラマ『青天を衝け』が、全然面白くなくてがっかりしている」

 NHKのエース・ディレクター、黒崎博さ…
Read More
医療 教育、受験

「偏差値という面妖なもの」

 受験シーズン真っ盛り、3月の大学受験ま…
Read More
その他 新聞 雑誌・出版

「令和3年 1月某日 最愛の夫が急逝しました」

 毎月3回ずつ書いておりましたこのエッセ…
Read More
季節 社会 雑誌・出版

「コロナ禍の中の歳末風景 感染症の年に思い出すわが家のお節造り」

予約していた美容院で、今年最後のカットを…
Read More
政治 演劇 社会

「蟄居蟄居の師走と『オペラ座の怪人』再演」

 東京の感染者数が800越えと聞くと、怖…
Read More
演劇 音楽

「コロナ禍の中、久しぶりに生舞台を2つ見た。ミュージカルの『プロデューサーズ』と、定着してきた『オペラ歌手紅白対抗歌合戦』である」

  この2つの舞台で、何が特徴的だったと…
Read More
テレビ 地域 音楽

「終わったばかりの『エール』のスピンオフ・エピソード」

 古関裕而さんといえば私は1番にハモンド…
Read More
映画 歴史 社会

「日本映画、『罪の声』は見ごたえのある佳作である」

    1984年、昭和59年から昭和6…
Read More
テレビ 賞、審査

「テレビ界、コロナの中で徐々に動き出した賞取りレースの裏話」

 2020年はコロナ禍で放送がぐちゃぐち…
Read More
テレビ 旅行 社会

「遅まきながらGo Toトラベルに参入してみた」

 日常が余りに忙しいので、テレビで浅草な…
Read More
戦争 映画 歴史

「第77回ヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞(監督賞)をとった『スパイの妻』の脚本は、黒沢清監督と、彼の東京藝術大学での教え子2人との共同作品である」

 1940年の神戸が舞台のスパイもの映画…
Read More
スポーツ テレビ

「2位も危なくなってきた、わが阪神タイガースに『喝』だ!」

 10月9日に阪神タイガースの揚塩健治球…
Read More
社会 音楽

「騒音公害に無神経なニッポン。公共の場所での騒音は一種の拷問である」

 先週の午後、14時50分、松本発のJR…
Read More
医療

「誤診2回、危うくガン患者にされるところだった話」

 10年以上前、尾籠な話で恥ずかしいが、…
Read More
映画 音楽

「パヴァロッティ 燦 燦 燦!」

 9月4日金曜日の大新聞夕刊、最終面に、…
Read More
テレビ 地域 政治 社会

「94年の歴史に幕を閉じる≪としまえん≫の8月31日にある種の感慨がある」

 朝のNHK総合テレビ「おはよう日本」で…
Read More
戦争 映画 社会

「映画『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』を新宿武蔵野館で観てきた」

 ベラルーシの大統領選が変なことになって…
Read More
テレビ 戦争 社会

「75年目の終戦記念日、私の疎開体験を伝えておかねばならない」

 戦前から人間をやっているのに、これまで…
Read More
その他 医療

超人的な白内障手術に感謝する

 数年前、世の中の景色が全部グレーがかっ…
Read More
旅行 社会

「Go To トラベル ならぬ Go To ドラブルキャンペーンだ」

 明22日から行われる「GoTo トラベ…
Read More